書評Books 生きる勇気をもたらす言葉たち
がん哲学外来カフェ@川越 to be cafe代表/日本同盟基督教団・霞ヶ関キリスト教会 牧師 佐野泰道
(某月某日、がん哲学外来カフェにて。Aさん・Bさんと)
私 「樋野先生の新しい本が出たんですよ。」
A 「へ〜。コンパクトで持ちやすい。」
B 「字が大きいですね!」
A 「うん、大きい。これは疲れている時でも読めそう。」
B 「あ、日めくりみたいになっている。」
A 「ほんとだ。がんカフェに持って行って、『何が出てくるかな〜』みたいに開いて読んでもいいですね。」
私 「Aさんは、どの言葉が好き?」
A 「『八方塞がりでも天は開いている』(本文28日目)かな。がんの治療は一区切りしても、心にポッカリと穴が空いていて。その穴を埋めたくても、どうすることもできなくて。八方塞がりだなって。でも、天は開いている! これはすごい発見でした。」
私 「Bさんは?」
B 「この中だと、『あなたはそこにいるだけで価値ある存在』(本文8日目)ですね。治療中もつらかったけど、治療が終わってから孤独を感じていて……。病院とも距離ができてしまって、話を聞いてくれる人がいなくて。寂しいとか、不安とか、怖いとか、ぜんぶ自分で吞み込んで、家で泣いていたんです。人には心配かけて、迷惑かけて。自分には価値がないって思っていた時に、この言葉に勇気をもらいました。生きているだけでいいんだって、頭をナデナデしてもらった感じ。」
A 「わかる〜。あんなにつらい治療がんばったのに、治療を終えても全然プラスなことがない。前の自分には戻れないし、大きなものをなくしてしまった。でも、『そこにいるだけで価値がある』って、うれしいよね。」
言葉の処方箋は、助けを求める人々の心にさりげなく寄り添います。そしてジワジワと、生きる勇気をもたらしてくれます。この本が豊かに用いられ、勇気を必要とする人たちに言葉の処方箋が届きますように。