書評Books 神との交わりの中にまず引き込まれて
神との交わりの中にまず引き込まれて
インマヌエル高津キリスト教会 牧師 藤本満
『詩篇とともに歩む日々160の祈りと霊想』
工藤弘雄 著
B6判 2,000円+税
いのちのことば社
キリスト者の信仰的な営みの中で、最も日常的なことは祈りです。祈ることは礼拝でも諸集会でもなされますが、日々祈ってこそ、私たちは神との交わりの中に生きることになります。祈りの中で神に語りかけ、神は語られます。
祈りと聖書を読むことがともになされたら、どれほど神との交わりが実質的なものになるか、よくわかっています。ところが、うまくいきません。読み解く努力と悩みや課題を神にお話しする祈り、この二つの足並みが揃いません。
だれもが感じているこの問題に、解決の道を与えてくれるのが本書です。本書は、詩篇を一篇ずつ、一一九篇は十一回にわけて、計百六十回の解説が記されています。解説は短く読みやすく、それでいて絶望から希望へ、恐れから確信へと魂の動きを説明したり、詩篇が記された状況に解説の力点を置いたり、詩篇の歴史的状況、神学的意味あい、ヘブル文化との関わりと学びは豊かで確かです。回りくどい説明はありません。
当然、本書が一気に読まれることは意図されていません。それどころか、本書だけで魂の養いを与えようという意図もありません。まず、私たち自身が詩篇を読むこと、次に一篇一篇、本書の霊的解説を読み、さらに詩篇一篇からくみ取るべき祈りが、わずか二行でまとめられています。
まず「私たちの魂を詩篇に沿わせ」、その祈りに心を重ねる。その上で、私たちが固有に抱える課題へと祈り進めていく。祈る前に、詩篇を通して神と交わる。その姿勢を保ったままで自分の祈りをなす。
著者は、説教者・神学校教師として著名でありますが、もう一つ、評者の目に魅力を感じさせることがあります。それは著者が会衆席に座ると、最後の祈りは不思議なほど著者に指名がいくのです。なぜならどんな説教であろうが、説教者以上に神の語りかけを把握し、祈りの中でそれをまとめ、それから会衆を代表して応答してくださるからです。評者はその賜物が本書に現れていると思います。著者の「まとめ」に自分を浸し、その上で祈るとき、真実に神と交わることができると―。