書評Books 喜びをもって使命を果たすために

喜びをもって使命を果たすために

 

聖学院大学大学院客員教授 窪寺俊之

 

『牧師・教会リーダーのためのメンタルヘルス
教職・信徒が共に歩むために』
河村従彦 著
B6判 1,300円+税
いのちのことば社

著者の河村先生は、牧師・神学院院長、かつ臨床心理士の資格を持っている。その豊かな経験と知恵をもとに牧師と信徒のために本を書いてくださった。牧会が楽しくなり、喜びをもって使命を果たすことを助ける本である。非常に具体的でわかりやすく、臨床現場に役立つ内容である。

全体は五章で構成されている。「しょいこみ過ぎていませんか」、「自分の責任範囲が見えてくる」、「素の自分が見えてくる」、「他者との関係が見えてくる」、「牧師の仕事が見えてくる」。

読後感の第一は、河村先生の牧師や信徒への非常に熱い思いである。教会の中にある誤った福音理解や人間関係を問い直して、健全な福音理解に引き戻してくれる。それができるのは、著者が臨床心理士の資格を持つ牧師だからである。著者は、「現代は医学や心理学が発達し、それぞれかなりの専門性が要求されます。宗教家や牧師は、医師や心理士、福祉士など他職種の専門性を尊重する必要があります。同時に、全人格的なケアを念頭に置きつつ、宗教家が専門性を発揮することが期待されている霊性の部分にお仕えすることに集中していくべきでしょう」(三〇頁)と言う。

また、「現代社会で、能力以上のものを求められ、牧会に疲れてしまっている牧師や教会リーダーが少なくないと思います」と言い、「人の領域にまで踏み込んで来る方」について「ひたすら受容し、ただ振り回されて疲弊してしまう」と警告している(四六頁)。人格的問題を持つ人との関係についての知識が必要であると言う。そして、教会員との良い関係の作り方にも触れている。「信徒の方は真実にお仕えしたいという気持ちをもっておられるのですから、それを上手に支え、生かしていくのが牧会です」(八二頁)と、牧師が信徒を生かすことを知ることで教会は元気になり、神様の栄光を現すことができると語る。

教会を変え、牧師の喜びを増す内容がいっぱいである。牧会に悩んでいる牧師やリーダーにも、またこれから牧会の現場に出る方にもぜひ読んでいただきたい一冊である。