~Daily Light~ 第4回 約束の花
石居麻耶 Maya Ishii
千葉県出身。アーティスト。画家。イラストレーター。東京藝術大学大学院美術学部デザイン専攻描画造形研究室修了。
大学卒業後の個展やグループ展等の展覧会やホームページ、ブログで発表した作品をきっかけに本の装画、週刊誌、文芸誌、新聞連載のイラストなどの仕事を担当。
日々、さまざまな表情を見せる空のように、季節ごとに咲く花々があります。なかでも春に、辺りを明るく照らすように咲いて風に舞い散る桜は、日本ではお花見といえば桜を指すように、特別な意味合いを感じさせることもある花です。
春を待つ間の冬をじっと耐え忍ぶ日々。曇り空、通り雨。粉雪、吹雪。その向こうにある花咲く日を待ちわびる気持ちは季節との約束になり、明日を待つことが、忍耐から待望に変わります。老木のように年を重ねていっても、はらはらと舞う花びらのように生涯を終えるとしても、待ち望む季節を常に心の内に持って歩み続けられるならば、明日を見つめるまなざしを、日々の喜びを、いつまでも続くものは何かを、いつどんな時でも忘れずにいられるのではないでしょうか。
桜の花に限らず花というものは、私たちの人生が儚いものであり、かけがえのないものであることを、やわらかに感じさせてくれるように思います。名前を知ればいつしか気に留めなくなっていた花も、咲いてしぼんで散り、また次の花が咲くのを見つめていると、人生における命の奇跡の連なりや一期一会の出会いを思わされもします。
花の美しさを前にして私は、自分の無力さと存在の小ささを感じてしまいます。しかし、花ほどの美しいものを作り出すことはできないけれども、花の美しさを心に留めて、感動することはできます。
閉ざされた窓が開け放たれ、遠くからの風を迎え入れる頃、季節が繰り返されて再び同じ花が咲くのを見ると、私は思うのです。「その色彩は常に新しいということをお伝えし続けてゆきたい」と。
「ですから、私たちは落胆しません。たとえ私たちの外なる人は衰えても、内なる人は日々新たにされています。」
(コリント人への手紙第二 4章16節)