書評Books ハプニングとしてのたましいのケア
ハプニングとしてのたましいのケア
クリスチャンライフ成長研究会 総主事 太田和功一
『ふり返る祈り
神に問い 耳を澄ませる』
斉藤善樹 著
B6判 1,200円+税
いのちのことば社
本書は、その「あとがき」にあるように、二十年以上にわたって教会員にネット配信で送り続けている著者自身の祈りの中から選ばれた二十四の祈りとその解説です。
その祈りの特徴の一つは、いつも自分の弱さや心の状態の正直な告白から始まることです。不安や恐れ、心の傷と歪み、心の貧しさとプライド、自我への執着や短気、嫉妬や苛立ち、人の評価に左右され、偽りの自分を演じてしまう苦しさ、落ち着けない、静まれない心、祈りたくても祈れないもどかしさ、重なる試練を受けとめきれない苦しさなど……これらは私たちの多くが経験するたたかいなので、一つ一つの祈りが身近なものに感じられてきます。
もう一つの特徴は、祈り求めることの中心にあるものです。それを一言にまとめるならば、自分の力ではできないことをできるようにしてくださる神の恵みを切に求める祈りであるということです。“~できるようにしてください”、“~できますように”、“~であらせてください”、“~させてください”、“~する信仰を与えてください”など、自分の弱さを正直に認めて、この弱さを通してこそ知ることのできる神の恵みを祈り求めています。ですから、一つ一つの祈りが、読者の心をおのずと主に向かわせ、自分もその恵みを著者といっしょに求めたいという願いを起こさせてくれるのではないでしょうか。
たましいのケアは、誰かが誰かに対してすることであるよりも、誰かと誰かの間に起こること、ハプニングだという言葉を聞いたことがあります。人が意図的にするたましいのケアも用いられるでしょうが、心と心の交わりのうちに主が働いてくださる出来事として経験するものという意味でしょうか。
本書にある著者の個人的な心の祈りを通して、主のたましいのケアが、読者の心にハプニングとして与えられることを願ってやみません。