書評Books レンズのこちらと向こう

レンズのこちらと向こう

漫画家・イラストレーター 勝間としを

『日めくり いっしょにいるよ』
ヒロジカズオ 写真
四六変型 1,400円+税
フォレストブックス

一日一日いろんな心でめくられていく、日めくりカレンダー。その中に自由な猫たちがいる。スヤスヤと眠る猫、大きな口をあけてあくびをする猫、好奇心いっぱいの猫。カレンダーの中の猫たちはみんな愛らしく、ほほえましい。

なぜこんなに愛らしいのか。きっとどの猫も、「ハイ!チーズ」と、モデルのように、ポーズをとっていないからなんだろう。

写真家ヒロジカズオ氏はライフワークで、このようなありのままの猫の写真を撮られている。猫たちの、レンズのこちら側をまるで意識していない日常が見えてくる。

神様はこんな感じで、私たちを、そっと見ておられるのかと思わされる。「わたしの目には、あなたは高価で尊い」(イザヤ書43・4)のみことばが重なった。決して高価でもない私たちなのに、「あなたは高価なものなのだ」と、神様は語りかけてくださる。

私も野良猫をモチーフとして絵を描いている。何気なく描き始めた猫に、ある時ひとつのことに気づかされた。

野良猫は、自由のようでいて、たくさんの危険や問題と背中合わせで生きている。ペットショップの猫のように、高価な値段もつけられていない。でもそんな野良猫でさえ、心優しい人の優しい目にとまると、もはや、ただの野良猫ではなくなる。「元気?」って話しかけられたり、手を伸ばしてなでられたり。

ましてやその人の家に持ち帰られたなら、その猫は野良猫ではなくなり、住まいの中で飼い主に守られる。

まるで神様と人間の関係と似ていると、教えられた。

まだまだすべての野良猫が保護されないのが現実だ。寒い日は、雨の日はどうしているのかと心が痛む。そのように神様は、救いを知らない人々のことを気にかけてくださっている。

ヒロジ氏のレンズのこちら側の目には、まるで神様が私たちを見ておられるのとよく似た温度が感じられる。そして、日めくりの中の世界は、こちらと向こうの境界線が見えないくらい、愛おしい。