書評Books “エマオの途上”をリアルに味わう一冊
日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団・高槻キリスト教会 牧師 福井美由記
『喜びの知らせ 説教による教理入門』
朝岡 勝 著
B6判 1,700円+税
いのちのことば社
本書の著者である朝岡勝先生には、ほんの数回しかお会いしたことがなく、実際に説教されている姿を目にしたことはありません。しかし、この説教集からイメージとして浮かび上がるのは、会衆を誰一人として置き去りにすることがないよう、それぞれに寄り添うやさしい言葉で語られている姿です。
副題の「教理入門」が目に入った瞬間、「堅苦しい学びはちょっと……」と思わず身構えそうになるかもしれません。しかし、読めば読むほど聖書全体から語られる慰めと希望の伝道メッセージに、自然と心が燃やされていきます。著者が何度も読者を励ましているように、頭で理解するのではなく、聖霊が働かれて、聖書や教理の中心であるキリストを知ることができるのだと体感するのです。
読後感としては、まるでエマオの途上の弟子たちと同じ心境です。イエス様から聖書全体を説き明かされ、塞ぎがちになっていた心が再び燃やされた弟子たちの喜びが、私たちの内側にも湧き上がってきます。それだけではありません。
タイトルである『喜びの知らせ』とは、イエス・キリストの十字架の死と復活によって神の子とされたこと、また、「神の子どもとして神のみこころに生き、この世界を神の国として建て上げていく使命に生きる者とされていく」(二六頁)ことだと教えています。まさしく、聖書が語るあの弟子たちの歩みと地続きの物語が、私たちのこれからの人生に紡がれていくのです。
私にとっての「刺さる一冊」とは、深い共感と同時に読者に問いを与え続ける本を意味します。本書は「あなたは説教者として、内側から溢れる福音の喜びに生きているか? あなたが講壇から語るその御言葉は、飾りではなく本物か?」という問いをもって私の心に迫ってきました。
「語られ、聞かれてこその福音、宣べ伝えられてこその福音……生きられてこその福音」(二六一頁)―そう、「福音」とは、名詞ではなく動詞であることを教えてくれた珠玉の説教集でした。