苦しみの季節に主権的に働かれる憐み深い神
保守バプテスト同盟・仙台聖書バプテスト教会 牧師 鈴木茂
『コロナウイルスとキリスト
未曽有の危機に聖書を読む』
ジョン・パイパー 著
渡部謙一 訳
B6判 800円+税
いのちのことば社
今は「苦しい時期」である。本書の著者パイパー博士も、コロナウイルスの感染拡大はまさに「苦い摂理」である、と語っている(本文四三頁)。
そのような時もすべてを統治する神の御手の中にあることと、この現実の只中に神の主権的働きがあることを著者は強調する。神ご自身がこの「苦しい時期」を荘厳な救いの計画の中に摂理的に組み入れていること、また神が救いの完成に向けて全被造物に対して包括的に、かつ繊細に働きかけているという現実に信仰の目が向けられるように、と著者は語りかける。
本書において著者が、繰り返し表現している重要な真理がある。その真理は、私たちにとって希望や生きる力の根拠、また源となる。「コロナウイルスの拡大を止めることもできるが、今は止めないでいる神の主権は、コロナウイルスによる不安の中でもたましいを支えている神の主権と、まさに同じものである」(二五頁)。
いかなる状況の中でも、神はまさに唯一堅固であり、その主権は甘美である、と言う著者の言葉に、深い慰めや安心感を得ることができる。すべてのものが奪われていくような状況であるからこそ、キリストの至高の、すべてのを満たすことができる偉大さがより際立って輝いてくる。厳しい摂理の中で私たちは、痛みや悲しみも体験もするが、その中で同時に愛と憐みをもって繊細に一羽の雀さえも生かす神が、より大きな価値がある私たちをキリストにあって生かしてくださるのだ。
インドとペルシャで宣教師として働いたヘンリー・マーティンの日記の言葉が引用されているが、私たちはみな神から自分に与えられている働きをなすまでは「不死身」なのである(六〇頁)。神の主権は確かに「堅固」であり「甘美」なのである。
私たちは、今神が主権的になさろうとしている働きを無駄にしてはいけない。神に謙虚に聴き、真の悔い改めが意味するキリストの無限の尊さを中心として人生を立て直す時なのだと本書を読んで思わされる(一〇三頁)。