書評Books こどもたちの心に灯るクリスマスの喜び

等々力教会善隣幼稚園 園長 井上直子

『はじめてであうクリスマスものがたり』
マフ・シンガー 文
ピーター・スティーブンソン 絵
162mm×197mm
900円+税
いのちのことば社

我が子が絵本に興味を示し始めたころ、まず手にしたのは、動物が次から次へと登場する『ノアのはこぶね』の物語でした。ページがぼろぼろになってしまうまで、何度も何度も一緒に楽しんだことが忘れられません。

一匹ずつ形も大きさも違う動物たちは、こどもたちの興味関心をひきつけます。わたしの幼稚園のこどもたちも同じです。動物や虫などの生き物は、こどもたちにとっては生きる喜びを分かち合える親しい仲間なのでしょう。

この『はじめてであう クリスマスものがたり』にも、すべてのページにかわいい動物たちが描かれています。降誕物語のお馴染みの登場人物以上に、その動物たちに目がとまります。そして、動物たちの視線の先には、救い主の誕生を待ち望む人々の物語があるのです。

この愛らしい絵本を手にしたこどもはまず、表紙の「とびら」に手をかけて開き、動物たちに導かれながら、救い主イエスさまを捜し始めます。

小さなこどもの手でもめくりやすい丈夫な硬い素材で作られているページを、何度でも繰り返しめくりながら、ひとりで隅々まで絵をながめていると、温かいぬくもりに満ちた色合いの絵が幼い心に光を灯してくれることでしょう。

もちろん、お父さんやお母さんに読んでもらうことが、こどもにとって一番うれしいのですから、何度も読んでもらううちに、お話を覚えてしまうかもしれません。

そうして一緒にイエスさまを捜す旅を楽しむことができます。最後のページには、我が子を抱き抱えたお父さんが、部屋を照らす灯を手にして微笑んでいます。それは、今わたしたちの心の中に、クリスマスの喜びが訪れていることを象徴しているように思います。きっと同じ喜びが、こどもたちの心の中にも自然に届き、心が育つ糧となることでしょう。
小さなこどもたちと一緒に、ご家庭でぜひ開いていただきたい一冊です。
「わたしは神から遣わされた光である。その『光が世に来ている』ヨハネの福音書三章一九節」(本書二〇頁)。

 

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