書評Books 大祭司イエスと共に歩む
日本同盟基督教団・中原キリスト教会 牧師 山口希生
『恐怖からの解放者イエス ヘブル人への手紙、私訳と解釈』
高橋秀典 著
B6判 2,000円+税
いのちのことば社
へブル人への手紙は、「イエス・キリストは、昨日も今日も、とこしえに変わることがありません」(一三・八)、「ですから、弱った手と衰えた膝をまっすぐにしなさい」(一二・一二)などの、人々に親しまれてきた愛唱聖句を数多く含んでいる書簡です。と同時に、この書を最後まで読み通すのに困難を覚えた方も少なくないでしょう。この書簡で縦横無尽に引用される旧約聖書を用いた神学議論の深遠さに戸惑うのと同時に、この書簡に一貫して流れる、堅忍を求める厳しいメッセージにたじろいでしまうこともあるのではないでしょうか。
けれども、旧約聖書の説教集を何冊も出版され、旧約聖書の視点から新約聖書を解き明かすことにかけては右に出る者のいない高橋秀典牧師と共に本書簡を読めば、この書の汲めども尽きない豊かな恵みを存分に味わうことができるでしょう。また、しばしば読者を悩ませてきたこの書簡の厳しい「警告」の箇所も、実は慰めと励ましに満ちたメッセージであることが納得できるでしょう。
へブル人への手紙の最も素晴らしい点は、大祭司として今もなお天において私たちのためにとりなしをしてくださっているイエスを感動的に描いていることです。イエスが復活されたのは、まさに死によって中断されることのない、永遠の祭司職を天の聖所において務めるためでした。イエスは人間として、私たちと全く同じように、人間であるがゆえの苦しみをなめられ、また人間の持つ弱さを身をもって体験されました。ですから、この世界でもがき苦しむ私たちに心から共感し、必要な慰めと助けを与えてくださることができるのです。
「あなたは今すでに、キリストの栄光の姿にまで造り変えられる途上にあるのです。そのように創造主なる聖霊があなたを心の内側から造り変え、完成に導いてくださるという約束に信頼して歩むことこそ、神に喜ばれるものです」(本書一九四頁)。
私たちには、私たちの完成のために常に祈っておられる大祭司イエスがいるのです。