~Daily Light~ 第12回 ホワイト・クリスマス

 

石居麻耶 Maya Ishii

千葉県出身。アーティスト。画家。イラストレーター。東京藝術大学大学院美術学部デザイン専攻描画造形研究室修了。大学卒業後の個展やグループ展等の展覧会やホームページ、ブログで発表した作品をきっかけに本の装画、週刊誌、文芸誌、新聞連載のイラストなどの仕事を担当。

 

1年前のクリスマス・イブの夜。前日に手術を受けた私は集中治療室から一般病棟に戻ったところでした。

病院食は特別なクリスマス・ディナー。骨付きチキンに小さなケーキまで。術後で味も匂いも全くわからなかったけれども、食事の温かさは心に少しずつ日常を取り戻してくれたような気がしました。

集中治療室での眠れない夜、子どもの頃身体が弱かった妹のことを思い出していました。病院のお世話にならない月はないほどでしたし、急変したときにはかかりつけ医が往診してくださいました。枯れかかったもみの木に点滅するツリーのライト。

幼かった私は、病院でも家でもただ妹を見守ることしかできず、生きてゆくつらさ、痛みや苦しみについてどうにかならないものかと考えてもいました。星も見えない冬の夜、ぐったりと横になっている妹の元に駆けつけてくださった白衣の先生がサンタクロースのように見えたものです。

そんなことを思い返していると、病室のベッドから見る窓の外に、雪。私は今、ひとりだけれど、今日までに失われてしまったものも多々あるけれども、思えば、日々紡がれて今につながっているものもある。助けられ支えられてもいる。一人だけれど独りではない。生きることと生かされているということ。これから私にできること……。

それから一年が過ぎ、再び迎えるクリスマス。街を彩る夢の数々。そして、考えています。これからの時間の、その色が何色になるかを。

「もうしばらく、光はあなたがたの間にあります。闇があなたがたを襲うことがないように、あなたがたは光があるうちに歩きなさい。闇の中を歩く者は、自分がどこへ行くのか分かりません。自分に光があるうちに、光の子どもとなれるように、光を信じなさい。」(ヨハネの福音書12章35-36節)

 

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