~Daily Light~ 第13回 羽ばたく
石居麻耶 Maya Ishii
千葉県出身。アーティスト。画家。イラストレーター。東京藝術大学大学院美術学部デザイン専攻描画造形研究室修了。
大学卒業後の個展やグループ展等の展覧会やホームページ、ブログで発表した作品をきっかけに本の装画、週刊誌、文芸誌、新聞連載のイラストなどの仕事を担当。
さまざまな日々を緩やかに思い返すとき、明日のことは本当にわからないものだとしみじみ思います。けれどもだからこそ、その日そのときできることを頑張ろうという気持ちになったり、感謝の思いがしたり、新しいことに挑戦しようと思えたり、気づけるかどうかによって目の前に見える光景はずいぶんと違ってくるのではないかと思わされたりもします。
遠くまで歩けなくても、動けない日があっても、よく晴れた日でもぼんやりと曇った日でも雨の日でも、一日の中に心に留まる何かを見つけるということ。
行き詰まったと思えたとき、本当は目の前を取り囲む空しさや絶望などはなくて、そのときの周りの出来事をいくつも見落としてしまっている自分がいるだけなのかもしれません。
何度も見上げてきた空。でもそこには常に新鮮な感動を見いだすことができ、心が動けば、それらの新しさに驚いたり、美しさに癒やされたり、思いを巡らせることができます。風は吹くときに風になり、私たちは心動くときに「生きている」。
そうして時が進むことで見えてくるものが変わり、ある日あるとき、あるタイミングで、人生に大きく刻まれる出会いが訪れる気がしています。
日常の中に空気のように溶け込んでいて、いまだ形になっていないものの中に、何か必要とされるもの、大切なものがあると感じ取れたとき、明日につながる希望の光景が心に描かれるはずです。誰でも思い描くことのできるはずの、一日の中できらりと光るもの。
どこからか風がピィと鳥の声のような音を立て、目の前の空気を大きな手ですくいあげるように天高く巻き上げてゆきます。まるで風にも明日に向かう意志があるかのような。
「恐れるな。わたしがあなたとともにいるからだ。」
(イザヤ書43章5節)