書評Books 親から「自立」した信仰

日本同盟基督教団・小平聖書キリスト教会 牧師 大瀧恵理也

『ボクはこんなふうにして恵みを知った クリスチャン・ホームのケース・スタディ』
河村従彦 著
B6判・定価1,540円(税込)
いのちのことば社

本書は「どのように神様の恵みを知ったのか」という著者の体験談ではない。あまり語られなかった、クリスチャン二世、三世の人格形成プロセスの考察であり、エッセイである。聖書の引用は少ないが、それが著者の意図でもあるのだろう。牧会をしつつ学ばれた臨床心理学の視点から、クリスチャンホームで人格形成をした人の「自立」というテーマを投げかける書である。

クリスチャンホームで育ち、やがて牧師、親となった著者が、自らの「青年期」の葛藤を踏まえて本書は記された。そのため、二世、三世ならではの悩みや揺れ動く心の洞察はリアルだ。たとえば、一世はいわゆる「ガーン」と表現できる劇的救いを体験しやすいが、二世、三世は必ずしも、そうならない背景を解き明かし励ます。むしろ「神さまとの出会いを育てていくという発想で考えることも可能なのではないか」、「ゆっくり恵みに深められていった体験を肯定的に評価し、堂々と胸を張ってよいと思います」と。

一方、クリスチャンホームで育つからこそ、陥りやすい盲点や、直面すべき課題も優しくアドバイスする。「霊的感覚と霊的体験の違い」等、深い考察が続く。私自身、クリスチャンホーム、牧師家庭で育ったため、「あるある」がいくつもあった。そして、著者が言う「自立」のプロセスをたどる葛藤に際し、私は、学生時代のKGK(キリスト者学生会)の学びや交わりが、大きな助けとなっていたことを改めて気づかされた。

著者の造語は、御言葉から再確認すると良いだろう。たとえば「ゆるゆる」は感覚的に捉えるのではなく、イエス様の柔和さ(マタイ一一・二九)、聖書が伝える神の恵みの深さから、理解を補正する必要がある。本書は、親からの借り物でも、周りの期待に応えた作り物でもなく、「ボクはこんなふうにして恵みを知った」と背伸びしない、でも真実な神様との出会いが、二世、三世に深められることを祈るよう促す。そして、自ら福音の恵みに生かされているかとの点検を促す。クリスチャン二世、三世、子育て世代の方々に、自分の立っているところを確認させる一冊だ。