書評Books いつも、心を燃やされて
福音伝道教団・館林キリスト教会 牧師 村上隆一
『心を燃やす説教を目指して 基礎的知識と準備の実践』
松原 智 著
A5判・定価1,430円(税込)
いのちのことば社
このたび、松原智牧師による『心を燃やす説教を目指して』を手にしました。師は笹塚キリスト教会牧師として二十二年。また、聖契神学校で説教学を担当して十年余になります。
その説教は、短い言葉にすれば、躍動感あふれるダイナミックなものです。ルターは福音とは「喜びの叫び」と言っています。それは、罪と死からの自由と解放を得た者の心躍る喜びの叫びであります。
今、この社会が切実に必要としているのは、この福音です。そして、師はこの福音をまさに福音らしく語る説教者であります。そんな松原智牧師による説教学の本が出版されたことは喜ばしいかぎりです。
説教者は世に迎合せず、喜ばせ屋に堕することもなく、神のメッセージを真っ直ぐ語ることを求められています。そして、いつも説教以上に語る者の生き方が問われます。この本は、説教学の学びであるとともに著者の成長の過程にも触れており、自伝的な説教学とも言えるものになっています。
内容は「基礎的知識」と「準備の実際」の二部構成です。基礎的な部分は、必要なものがコンパクトで、わかりやすくまとめられていて、これから牧師・伝道者を志す者にとっても、また、信徒説教者のチャレンジを受けている者にも有益な内容になっています。特に信徒説教者には、この本をお薦めしたいと思います。
説教準備の実践編は、著者自身の経験を踏まえて、興味深いものがあります。著者の言う説教とは「神が神の民に語りたいと願っておられるメッセージを説教者がまず聖書から聴き、説教者と神との親しい関係からあふれ出てくる、神の民へのライフ・メッセージである」(本文三六頁)とあります。
著者は二~三か月に一度は聖書全体を通読していると聞きました。そのような姿勢がこの著書全体のイメージを形成しているように思います。私は、説教歴五十七年余になりますが、初心に立ち返ることができました。