書評Books 人の心に届く言葉とは何か
日本福音自由教会・鳩ケ谷福音自由教会 牧師 大嶋重德
『いいんだよ、昨日までのこと全部。 心が軽くなる31のアンサー』
田中満矢 著
B6変型判・定価1,210円(税込)
フォレストブックス
たくさんの言葉で飾られても、何も心に響かないことがある。聖書の言葉が並べられても、都合の良い判断へと促そうとしているように感じることがある。説明の多い言葉が、さらに自分の心をかき乱してくることがある。「ありのままのあなたが素晴らしい」という陳腐な言葉は、おもねってくる大人の常套文句だと思っている若者には届かない。余計なことは聴きたくない。シンプルな愛のこもった言葉だけでいいのだ。
この本の素晴らしいことは、聖書は「要は何を伝えたいのか」ということがきちんと伝わってくることだ。私たち大人は使い慣れた神学用語、クリスチャン用語を用いて、聖書っぽい言葉を語りやすい。しかし「それは要はどういうこと?」と言われると、「うーん」と言葉に詰まってしまう。なぜなら自分でそれが「要はどういうことなのか」がわかっていないことが多いからだ。
しかし、ドラマー牧師の著者は考えてきた。クリスチャンではないライブの観客たちに、ファンたちに、まだナイトdeライトを知らない人たちに、自分たちが信じていることは「要はどういうことなのか」を。決して陳腐な言葉に終わることなく、飾り立てた聖書用語にとらわれることなく、心のど真ん中に届くように。限られた歌詞の限界に挑戦して、福音とはどういうことなのだろうかと考えて考えて、手に入れた言葉がここにある。
この本が今、著者の住む北海道の公立や私立の中学、高校に届けられている。さらには病院や施設、いのちの電話を通じて、死を考え込んでしまう人たちの手元にも届けられている。生きることの自信を失っている生徒、生きづらさを感じている生徒が、学校の図書館でこの本を手に取る姿が目に浮かぶ。北海道だけではなく、全国の中学、高校にも届けられてほしいと心から願う。あなたのそばの中高生たちにぜひプレゼントしてください。
またユースに御言葉を届けたいと願う牧師、教会学校の先生にもお薦めです。ああ自分の信じていることってこういうことだよなと、嬉しくなってくること間違いなしです。