兵庫大学大学院特任教授　窪寺俊之

『悩めるクリスチャンへのこころのケア』
天野ダニエル 著
Ａ５判・定価880円（税込）
いのちのことば社

満たされない気持ちをもつクリスチャンに朗報です。霊的にも心理的にも、もっと豊かな人生があるはずだと思っている方には、ここに一つの道が開かれています。読ませていただき、多くの点で共感し、良い示唆に富んでいる本と感じました。共感した三つの点をご紹介します。

第一に、信仰的立場から心理学の知識や技術を「人間的」「この世的」と名づけて排除しようとする人たちに警告を与えています。偏狭な信仰ではなく、神様が与えてくださった心理学の知識や技術を広く受け入れて、豊かな人生を生きるための助けにしようとしています。

第二に、著者は宣教師でも牧師でもなく、一般信徒の立場から、一般人の目線で書かれています。フランスから日本に来て、自らも悩んだ経験をもち、今、弱った人、悲しんでいる人、信仰的に落ち込んでいる人に寄り添おうとしています。

第三に、著者の純粋な気持ちに好感がもてます。驕らず、謙虚に、愛をもって書かれています。純粋に人の痛みに寄り添って、熱い祈りの中から書かれていると感じました。

第九章に、「心のケア」の学びの体験談を四人の方が書いておられます。どの証しも素敵です（五七～六〇頁）。「『人の助けになる』と思って始めた学びが自分自身のためであったことに気づきました。」「自分の中にあった迷いが消え、喜びがあふれてくるのを感じました。」「自分の心の底ときちんと向き合うことができ、八十を超えた私が、生まれ変わったように感じました。」「人を信じられるようになり、楽しいことや自分のしたいことなど、将来のことを少しは前向きに考えられるようになってきました。」

この本は最初フランス語で書かれたようです。二人のお名前が翻訳者として奥付にあります。優しいイラストを書かれた方は、訳者のお一人のお子さんでしょう。著者の周りにこうした良い翻訳者とイラストレーターがいることは、著者の信仰や人柄が愛されていることを感じさせてくれます。
家庭集会や小グループでの学びの教材にも適した本です。