330 時代を見る眼 コロナ禍の介護〔3〕 コロナ禍の看取り

グループホームみくに 代表
菊谷利昭

新型コロナウイルスは、私たちの日常生活を変えたように、介護の現場も大きく変えました。
それは外部との対面の機会がなくなってしまったこと。以前は、ご家族や地域の人々が頻繁に見えていたのが、コロナ禍になってから感染リスクが高くなるという理由で、施設側も来園者側も慎んでしまいました。

若い方でも亡くなる感染症ですので、これぐらい神経質にならないといけないのでしょうが、今振り返ると、せめてご家族との面会だけでも条件を緩めてあげるべきだったと後悔しています。当園ではコロナが直接の原因で、3名の方が亡くなっていますが、このコロナ禍でほかにも3名の方が亡くなっています。その中の1名は、就寝するまではお元気だったにもかかわらず、夜間に突然死されました。ご家族はあまりにも突然のことだったので心の整理もつかず、悲嘆にくれる姿を思い出すと今でもつらくなります。

それでも、普段から日頃の様子を配信していたことが唯一の救いでした。コロナウイルスは、最愛の親を看取ることも、立ち会うことをも許さなかったのでした。

さらにもうひとつの影響は、認知症の症状が重度化してしまうということです。

認知症を患う方にとって、グループホームは改善しないまでも、その症状がゆっくりと進んでいく場所です。それは、利用者様の身近で生活を共にするスタッフ、顔を見るだけで安心する家族、声をかけてくださる地域の人々がいるからです。

傍らに人がいるだけで、誰もが安心するものです。認知症に禁物なのは、不安と混乱です。コロナはその安心を奪ってしまいました。

このコロナ禍で、あらためて思うことがあります。利用者様の看取りは「みくに」に入所されたときからすでに始まっていることです。これまで何人もの利用者様の最期を看取ってきました。そのたびに、何もできなかった後悔ばかりが残っていました。コロナに直面して、限りある命に今最善を尽くしなさいと神様から教えられたように思います。

ほかに亡くなられた1名は、ご家族の積年の祈りで病床洗礼されたお母様でした。そしてもう1名は、亡くなる間際にご家族同席の中、祈って見送った方でした。コロナ禍はまだまだ続きますが、神様からお預かりしている「みくに」が、文字どおり地上のみくにとなるように歩みたいと思います。