こころを灯す光 第5回 父と母を敬え

頓所 康則

プロフィール
新潟県燕市出身。1985年生まれ。ハガキにペンを使って、その時その時の思いを描く活動をしている。どう生きたらいいかわからなくなった時に聖書に出合い、主イエスを信じる。2019年11月3日、新潟福音教会にてバプテスマを受ける。

お弁当箱を開けると、鯉のぼりの形に切られた板海苔がごはんの上を泳いでいる。それを見た私は「うわっ!」と喜びと驚きの声をあげる。お昼寝のお布団には白い布が縫いつけられ、猫の絵の下に平仮名で私の名前。そのお布団は、とってもとっても心地がよかった。

私が保育所にいた頃の記憶です。どちらも母がしてくれたこと。今、それを思い出しながら文を書いています。

私の父と母は、祖父の代から続く金属加工の工場を二人で切り盛りしています。私は介護の仕事をする前は、両親と同業種の会社に勤めていましたが、会社でもプライベートでも人とうまく馴染めず、「このままずっとひとりのまま、機械に向き合っていなきゃいけないのかな」、そう思った途端、ボロボロと涙が止まらなくなり、その後退職しました。

父は家でいつも不機嫌そうにしていました。けれどそれは、工場一つを経営しながら家族を守る、その心労がそこにあったからだと、今になって思います。

両親は精一杯、私を育ててくれました。それなのに私は、身体のことや、いろいろなことを両親のせいにして、時にはひどい言葉を浴びせてしまっていました。

「神は『父と母を敬え』、また『父や母をののしる者は、必ず殺されなければならない』と言われました。」
(マタイの福音書15章4節)

このみことばが深く心に刺さります。もう両親を悲しませたくありません。退勤後、「何か買い物して帰ろうか?」そんなメールを両親にするようになりました。両親のほうから「あれ買ってきて」とメールが来ることも。会話すらままならなかった、両親との関係。ほんのわずかなことかもしれませんが、それが少しでも修繕されているようで、うれしいです。