書評Books 新しい組織神学入門書
日本福音キリスト教会連合・生田丘の上キリスト教会 牧師 野村天路
『自分を知り、神を知る
聖書理解を助ける6つの鍵』
リチャード・ブラッシュ 著
ブラッシュ木綿子 訳
B6判・定価1,760円(税込)
いのちのことば社
神学書と聞くと、どのような内容を想像するでしょうか。難解な神学者たちの議論を説明したり解説したりしながら、神学的な議論を展開するような神学書が多いと思います。本書は、組織神学の入門書と位置づけられていますから、私も、この本は、神学的な前提知識がない人にも難しい議論をわかりやすく、身近なものとして解説するような本なのだろうと考えていました。
ところが、実際に読んでみると、そのような予想を超えるものでした。本書は、単に神学を解説するのではなく、読者とともに、手取り足取り、神学を実践するものでした。特別な予備知識がなくても(もちろん、予備知識があったほうがよいですが)著者の議論についていくことによって、聖書の中にある一見すると矛盾しているように思われる真理に真正面から向き合って、その真理を歪めることなく咀嚼するという神学を実践することができます。聖書の真理を歪めることなく咀嚼し、体系化していくことが、本書が目指し、また読者に促している組織神学といえるでしょう。
このような組織神学の営みは、決して容易なものではありませんが、私たち自身が取り組むべきことです。筋肉に関する知識がいくらあっても、筋トレを実践しなければ筋肉はつきません。同じように神学の知識があっても、実際に神学を実践して、聖書の真理を咀嚼しようとしなければ、真理に適った堅実な知恵を自分のものとしていくことはできないのです。
本書が扱っている内容や議論には、難しい内容も含まれますが、筆者は、全体を通じてわかりやすい例えや易しい言葉遣いで内容を丁寧に解説しています。また、ユーモアを交えた語り口で、読者を楽しませてくれます。何よりも、神学が無味乾燥で生き方には影響しない議論のための議論にならないようにという警戒を怠りません。各章の終わりで、その章で取り上げた神学が私たちの存在や生き方にどのような意味を持っているかをまとめてくれます。本書によって、真理に適った堅実な知識を得るという神学の実践を体験することができるでしょう。