書評Books 神様との関係を見つめ直す

兵庫大学大学院特任教授 窪寺俊之

 

『神の主権のもとに生きる ヨブ記を読む』
野田 秀 著
四六判・定価1,100円(税込)
いのちのことば社

本書を読みながら、みことばに仕える牧師、人の痛みや苦しみに寄り添う牧会者、いかなる境遇にも十字架の主イエスに従う信仰者の姿をも見ることができました。苦難に襲われたヨブと友人たちとの対話から私たちの信仰のあり方を考える本書は、そうした著者の優しく温かい言葉に満ちています。

この世には自分の欲望のままに生き、それでいて、何もかも順調に見える人たちがいます。そんなとき私たちはどこか納得のいかない気持ちになり、神様は全知全能で、正義の方なのではないか、という思いに苦しみます。「信仰をもっていても富む人と貧しい人があり、信仰をもたない人にもその両方があります。二人がこの問題で言い争ったのは、彼らがこの世のことだけに目を向けていたからです。死後の世界、永遠の世界、神の前に立つときのことを考えていなかったからです」(五六頁)という一文は、そんな私たちの視点を変えさせてくれます。

ヨブは財産や家族を失い、自分も病を負って、親しい友人から軽視されるという苦しみを味わいました。私たちもときに人から軽蔑されることがあります。「主イエス・キリストは十字架につけられるとき、ありとあらゆる侮蔑をお受けになりました。『また、葦の棒でイエスの頭をたたき、唾をかけ、ひざまずいて拝んだ』(マルコ一五・一九)、『通りすがりの人たちは、頭を振りながらイエスをののしって言った』(同二九節)などとありますが、主は黙ってそれに耐え、私たちの救いを成就してくださいました。このことを忘れてはなりません」(三六頁)。本書は、十字架の主イエスの苦しみを思い起こして、主の愛を見上げるようにと励ましてくれるのです。

三十年前、私はアメリカの日系人教会の修養会で著者の説教を初めてお聞きして深い霊的感動に導かれましたが、そのときの感動をもう一度味わうことができました。

各章は短くまとめられ、家庭礼拝や聖書研究のテキストとしても最適です。神様との関係を見つめ直し、健康で深い信仰を目指す人にお薦めしたい一冊です。