特集「ことば」を贈るクリスマス クリスマスには本を贈ろう!

教会だけでなく、世間もクリスマス一色になる十二月。「ほんとうのクリスマス」を伝えるために、「ことば」を贈ってみませんか?贈りたい相手を想い浮かべつつ、プレゼントに最適の文書と、身近な人に伝える「ことば」について考えます。

旭基督教会 牧師・大阪聖書学院学院長  岸本大樹

「一番きれいな色って
  なんだろう?
一番ひかってるものって
  なんだろう?
僕は探してた 最高のGIFTを
君が喜んだ姿を
イメージしながら」

これは二〇〇八年にMr.Childrenが歌った「GIFT」という曲の歌詞の冒頭部分です。この歌詞の中にある「君が喜んだ姿を イメージしながら」というフレーズは、私のお気に入りです。
クリスマスの季節になると、年の瀬ということもあり、親しい人たちやその年にお世話になった人たちにプレゼントを贈ることがあります。そのプレゼントを選ぶ際、思い出すのがこの「GIFT」という曲のフレーズです。

毎年、「これを受け取ったら、喜んでもらえるかな……」と思いつつ、少しウキウキしながら、プレゼントを選んでいます。

年の瀬の贈り物となりますが、「お歳暮」のような畏まったものではなく、気軽なプレゼントです。これまでに贈ったものといえば、お菓子の詰め合わせ、CD、マグカップ、アドベント・カレンダーなど、相手に合わせていろいろとありました。

けれども、プレゼントとして最も多かったのは本です。本といっても、私がクリスマスのプレゼントとして選ぶのは、主に説教集と絵本です。

説教集といっても、何巻にもわたる説教全集ではなく、一人あるいは複数の説教者による一冊の説教集をクリスマスのプレゼントとして贈ります。説教集を贈る対象は、若い牧師たちです。神学校の教え子やキリスト者学生会(KGK)の交わりで出会った卒業生で、今は牧師として働いている人たちです。

私自身、説教を読むのが大好きです。説教を通して、神のことばによる励ましや慰めを受け、養われたいと思っていますし、優れた説教に触れることで、説教者として成長したいと願っています。以前から、竹森満佐一、加藤常昭、榊原康夫、小林和夫などの先生方の説教集から学び、最近では平野克己、奥田知志、井ノ川勝などの先生方の説教から大きな刺激を受けています。

また、いのちのことば社のシリーズ「新約聖書に聴く」の出版されているすべてに目を通したわけではありませんが、遠藤勝信著『ペテロの手紙第二に聴く 真理に固く立って―ペテロの遺言』や袴田康裕著『コリント人への手紙第一に聴くⅠ 教会の一致と聖さ』などからも教えられることが大いにありました。説教を準備する上でも、とても参考になりました。

私は、説教者として、これら優れた先生方の真似をすることがよくあります。説教者として成長する一つの道は、優れた説教を真似ることだと信じているからです。

優れた説教を真似するとは、憧れの説教者の口調やしぐさを真似ることではありません。優れた説教の「完コピ」でもありません。

優れた説教を真似するとは、感銘を受けた説教や心打たれた説教から、なぜ自分が感銘を受け、心打たれたかを熟慮し、そこで語られている神学的な思考や表現を自分の説教に用いることです。優れた説教を取り込んで、福音を具体的に聴き手に届けることです。

若い牧師たちに説教集をプレゼントするのは、「優れた説教に触れてほしい。優れた説教から学び、共に説教者として成長しよう」という思いからです。優れた説教から学び、共に福音を広めていきたいからです。

余談ですが、日本では聖書信仰に立った、優れた説教集がもっと出版されてもいいように思います。神のことばに根ざした、優れた説教に触れることで、牧師たちが説教者として学ぶだけでなく、信徒たちも励まされ、その信仰が深まるのではないでしょうか。

絵本をプレゼントするにあたっては、必ずしも聖書や信仰に関する絵本にこだわりません。内容が豊かであれば、一般の絵本を選ぶこともあります。ここ数年でプレゼントした一般の絵本で、私が面白いと思ったのが、ジェフリー・ブラウン作(富永晶子訳)『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』(辰巳出版)とヨシタケシンスケ作『ころべばいいのに』(ブロンズ新社)です。

前者は映画『スターウォーズ』のヴィラン(敵)だったダース・ヴェイダーが、四歳になる息子のルークに振り回される様子がコミカルに描かれている絵本です。後者は、自分に嫌なことを言ってくる人たちが石につまずいて転べばいいのに……と正直に思ってしまう女の子のお話で、その人たちへの対処がユーモラスに描かれています。前者がほのぼのとした絵本で、後者が笑わせつつも考えさせられる絵本です。

信仰に関する絵本で、私が圧倒的にお薦めするのがマックス・ルケード作『たいせつなきみ』(いのちのことば社)です。一時は信仰を持って間もない方や求道者の方によくプレゼントし、非常に好評でした。

『たいせつなきみ』は、彫刻家エリが彫った「ウィミクス」という木のこびとたちのお話です。ウイミックスたちは、優れた才能や特技を持つ人たちには金の星シールを、才能や特技を見せられず、失敗を繰り返す人たちには灰色の駄目シールを貼り合い、一喜一憂していました。

主人公のパンチネロは、灰色の駄目シールが体中いっぱいになり、周囲から馬鹿にされ、傷ついていたときに、体に何のシールもない女の子に出会います。「なぜシールがないのか」と尋ねるパンチネロに、彼女は「エリに会っているから」と答えます。それを聞いてパンチネロは、恐る恐るエリのもとに向かいます。

そこでエリから、「お前のことはよく知っているよ。わたしにとって、お前はたいせつな存在だ。お前のことを愛している」と、思いもよらない言葉をパンチネロは聞くのです。そのとき、パンチネロの体から灰色の駄目シールが少しずつ落ちていく……というストーリーです。

『たいせつなきみ』の原題は『You Are Special』ですが、その原題のとおり、神にとって、私たちは特別で大切な存在であるということがテーマです。他者と比較して、一喜一憂する必要などなく、私たちの存在を神が愛してくださっていることがよくわかる絵本です。この絵本は、神の愛を知ってほしい、受け取ってほしいという思いで、よくプレゼントしました。

今年もクリスマスにはプレゼントを用意します。あの人には何がふさわしいのか。この人には何が喜んでもらえるのか。そのことを考えながら、プレゼントを用意することになりますが、今年も本を贈ることになると思います。本を通して何かが伝わり、喜んでもらいたいと願いながら。