特集 「ことば」を贈るクリスマス ひとりに与えられた思いは決して小さくない ~主から思いを与えられたら一歩踏み出そう その先には、祝福の実と収穫が待っているから~
信愛キリスト教会 牧師 伊東勝哉
「ガチャッ」
突然、扉を開けて外に出てきた中年男性に、その家のポストへ入れようと握っていた一枚のトラクトを、小学四年の娘が「はいっ!」と笑顔で差し出しました。
「あぁ、ありがとうね。」その男性も自然と、ニコっと笑って受け取ってくれました。恐れないで、素直に手渡せる心。子どもはすごいなぁと思いました。
トラクト配布を終えて教会に戻った際、自ら参加してくれた小学五年の女の子が「はぁ、疲れたぁ~」と素直に話してくれました。「そうだよね。伝道って疲れるよね。でもね、イエス様は、ぼくたちのために一軒一軒、こうして疲れながらも、足で歩いて伝道してくれたんだよね」と主の愛を分かち合いました。
二〇二〇年の年間聖句に、ルカの福音書一〇章二節が与えられました。
「収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、ご自分の収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。」
そして、主は、私が遣わされている市内十八万の魂(七万世帯)に福音を届けるという思いも与えてくださいました。先の見えない大きな山のようなチャレンジに思えましたが、できることから第一歩と、まず五千部の教会案内を作成し注文しました。
しかし、それが届いて間もなく、新型コロナウイルス感染拡大のニュースが報じられるようになり、教会は礼拝のことで精いっぱい。外部伝道への思いは棚上げとなり、ダンボールに入ったままの教会案内と、配布終了場所を「見える化」百部配るごとにシールを貼る)するために貼った市内の地図を、寂しく眺めるだけの日々が続き、時々、主につぶやきました。
「主よ、どうしてですか。あなたから与えられた思いでは……」と。
それから一年半以上が経過し、二〇二一年十一月。いのちのことば社の書籍販売車(ゴスペルボックス)が教会に来てくれた帰り際、スタッフが「オイコス計画に興味はないですか」と声をかけてくれました。
私は、その内容をザっとお聞きして、即答で「はい、興味があります。実は……」とそれまでの経緯を伝えました。「神のなさることはすべて、時にかなって美しい」(伝道者3・11)。
二〇二〇年に与えられた思いを再燃させてくださる時を主が備えておられたのです。
それどころか、さらに良い方法(教会案内に福音のトラクトを添えて)で、より多くの働き手と共にご自身の宣教に遣わそうとしてくださったのです。
早速、「オイコス計画」について役員、教会の皆さんに分かち合いました。
聖書の時代も、今の時代も、主から思いを与えられた人は、それを周囲に誠実に伝えていく使命があります。
もともとは、自分一人でもやろうと決意したことでしたが、それを機に、協力者が教会から起こされた時の喜びは、本当に大きなものでした。実際に配布に出かけられない方にも、背後での祈りをお願いしました。
冒頭の聖句で、イエス様は、「収穫のための祈り」が何より大切なことを教えておられるからです。
「オイコス計画」に参加させていただいて約半年が経ち、振り返るとたくさんの収穫がありました。
地域伝道への思いを共有し、教会で共に祈り始めてから、私たち教会員の中に、少しずつ変化が生まれてきています。
祈祷会は祝福され、ある人は、続けてきた聖書配布の働きや宣教師支援にますます喜びを実感し、ある人は、他の外部伝道の働きに進んで参加してくれるようになりました。ある人は、家族の救いのために祈り始め、実際に導いておられます。
そのような教会の人々の救霊に対する心の変化を見せていただきながら、実は、このような働きに加えられる私たち自身にも恵みの種は蒔かれ、豊かな実りと収穫に与っていることを実感します。
アメリカに本部を置くEHC(Every Home for Christ)の働きが世界中で行われ、日本では「オイコス計画」がスタートし、今も拡大し続けています。
「二〇三八年までに日本の全家庭五千三百四十万世帯にトラクト配布で福音を伝える」というビジョン。それはとてつもなく大きな山にも見えます。
しかし、その思いを主から与えられた人がいて、その思いをあきらめずに熱心に誠実に伝え続けたからこそ、この働きが祝福されています。
現在、国内約三百の教会が協力し、累計六十万枚を超えるトラクトが配布されたそうです。私が、この働きに信頼するのは、収穫の主への祈りがずっと積まれてきているからです。
「オイコス計画」は、数ある種類のトラクトの中から、私たちが選んだものを何枚でも無料で届けていただけます。しかし、その背後では、救霊のために多くの信仰者たちの祈りと捧げものが、人知れず捧げられています。
私たちの地域伝道の働きも、そのような多くの人々の祈りによって支えられているのです。
ですから、この働きは、一個人、一教会のものではなく、「全家庭にトラクト配布で福音を伝える」という主の思いに心動かされ一歩踏み出した多くの兄弟姉妹たちとの共同の働きなのです。そして、あらゆる面で優しくサポートしてくださるスタッフの方々がいますので、安心して誰でもどの教会でも、すぐにスタートできます。
約二千年前、父なる神様から思いを与えられ、ベツレヘムにお生まれになった御子イエス様は、救いの福音を携えて、御霊に満たされて一軒一軒、平安の子を捜し、訪ね歩いてくださいました。「主は別に七十二人を指名して、ご自分が行くつもりのすべての町や場所に、先に二人ずつ遣わされた」(ルカ10・1)とあります。
今も、イエス様は、ご自分が行くつもりの「あなた」が住んでいる町や場所(家々)に、先に「あなた」を遣わそうとしておられます。
こんな小さな私が、このような執筆を依頼され、綴っていること自体思いもよらなかった恵みの実です。
御子のご降誕をお祝いする幸いなクリスマスのとき。“すべての人を照らすまことの光”なるキリストの福音を携えて、共に、「この家に平安があるように」と祈りながら家々を訪ね、心に豊かに蒔かれる働きに出かけていきましょう。
★オイコス計画とは?
2020年7月より、いのちのことば社EHC(全国家庭文書伝道協会)が始めた「日本全戸にトラクト配布を行う」という活動。
現在、日本全国約300の地域教会が協力し、全家庭にトラクトを通して福音を伝える働きをしている。
*「オイコス」=ギリシア語で「家庭」「家族」を意味する語