こころを灯す光 最終回 いのちのことば

頓所 康則
プロフィール
新潟県燕市出身。1985年生まれ。ハガキにペンを使って、その時その時の思いを描く活動をしている。どう生きたらいいかわからなくなった時に聖書に出合い、主イエスを信じる。2019年11月3日、新潟福音教会にてバプテスマを受ける。

この連載のお仕事をいただく少し前に、「古本詩人ゆよん堂」という、ステキな古本屋との出合いがあった。場所は越後線内野駅の近く。新川沿いにあって、古本片手にコーヒーやチャイを飲める。店名の由来は中原中也の詩「サーカス」から。まるでサーカステントの中にいるような店内。なんとも不思議で、好奇心くすぐられるお店だ。

大人になってから、すっかり本を読まなくなっていた私に、店主がいろんなことを教えてくださった。中原中也の詩をはじめて読んだとき、ことばが音を奏でているようで、色を帯びているようで、感動のあまり唇や本を持つ手がピクピクと震えた。新潟にゆかりのある坂口安吾。太宰治の死について書いた『不良少年とキリスト』を読み、自身の思いをきっぱりと書ききる姿勢に魅了された。遠藤周作と交流のあった原民喜。妻を早くに亡くし、その後広島で原爆の犠牲となった。命こそ助かったものの、最期は鉄道自殺を選んだ。そんな彼の綴ったことばや生涯は、涙なくして読むことはできない。

「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばで生きる。」(マタイ4・4)

ことばには命が宿る。「神のことば」、「いのちのことば」といえば、聖書のことを指していると思う。けれども、“ゆよん”とした時の中、店主や常連さんとの何気ない会話、古本に記されたことばの一つ一つが私の心を養い、これらもまた、私にとっての「いのちのことば」となっている。

連載は今回で終わりを迎えるが、私の儚くもかけがえのない日常は続く。それを失いたくないから私は聖書を開く、そして歌う。アーメン。ハレルヤ。私の心の板に色濃く書き記された「いのちのことば」。