書評Books 若者の疑問を受け止め 信仰の豊かさへと導くキリスト教教理
キリスト者学生会 東北地区責任主事 永井創世
『10代から始める
キリスト教教理』
大嶋重德 著
四六判・定価1,760円(税込)
いのちのことば社
教会で育つ若者は、自分の信仰や聖書に対して多くの疑問があることに気がついていながら、それらをことばにできないでいることがあります。十代の頃の私もそうでした。下手に言葉にしてしまうと、自分自身や教会の大人たちの信仰を否定してしまうことになりそうで怖かったからです。かといって、一人で聖書を読んでも理解できず、信仰は不安定でした。そんな私にとって、本書は「こんな本が欲しかった」「これなら若者に届く」と思える一冊です。
本書は、学生伝道団体で二十年働いてこられた著者による、十代の若者を意識したキリスト教教理の本です。聖書の基本的な教えに加え、若者にとって関心度の高い「性・恋愛・結婚」「進路」「生きる意味」などのテーマが重点的に扱われているのが特徴です。ただし、本書は決して手軽な本ではありません。教理を学ぶ上で欠かせない伝統的な神学の表現をそのまま用いるなど、一見、「十代から」を謳うには意外なほど硬い印象を受けます。
しかし、それでいて本書が「これなら若者に届く」と思えるのは、著者が常に、教理と若者の現実とを結びつけてくれるからです。そして、若者の抱く葛藤や悩みを汲み取りながら、簡単で軽いことばによってではなく、聖書のみことばと、教会が歴史の中で獲得してきた神学のことばをもって答えます。
だからこそ、本書は読者に対し、ことばにできなかった疑問をかわさずにちゃんと受け止めてもらえた実感と、聖書がそんな疑問にもちゃんと答えてくれる書であるという確信を与え、自分たちの信じている信仰がどれほど豊かなものであるのかを、深く心に刻ませる一冊となっています。それは著者の言う「骨の太い信仰」を、若者の内に確かに立てる尊いきっかけとなるでしょう。
本書は、若者の疑問を受け止め、信仰の豊かさへと導くキリスト教教理の本です。十代の若者はもちろん、若者と共に生きる教会のすべての世代が、共に学ぶことのできる良書です。