書評 Books 祈りの円を描き続ける サークル・メーカー
福島第一聖書バプテスト教会 アドバイザー牧師 佐藤彰
『サークル・メーカー
最後まで祈り抜く人が見る奇跡』
マーク・バターソン 著
佐藤是伸・結城絵美子 共訳
四六判・定価2,200円(税込)
いのちのことば社
新年の始まりにふさわしい一冊を手にしました。自分が駄目でも、状況が困難でも、祈りの武器がある。祈りの原点に気づかせてくれる、未来を切り拓く鍵が秘められた祈りの書です。
シカゴで開拓伝道に行き詰まる経験をしたマーク・バターソン牧師は、何世代にもわたるユダヤ教のラビたちの教えをまとめた「伝説の書」に記された賢者ホニの雨乞いの祈りに目を留めます。時は紀元前一世紀、干ばつ下のエルサレムで彼は地面に弧を描き、その中で雨を求めて祈り始めます。粘り強く、確信をもって。するとやがて天の窓が開き、救いの雨がもたらされたという伝説です。
神の業の現れは、祈りのサークル・メーカーから始まる。そう確信した彼は、ワシントンDCのナショナル・コミュニティー・チャーチで牧師として仕切り直しをします。結果何が起こったかは感動をもって綴られていますが、それは出エジプトのようでもあり、エリヤの祈りのようにも見えます。
不可能と思われた土地建物が奇跡的に手に入る逸話もさることながら、だから諦めないで祈るようにとの勧めや、祈りの瓶詰めの話等は祈る心を奮い立たせます。神の時が来たらやがて蓋は開けられ、神のご意思と方法によって祈りは答えられる。つまり祈りこそが未来への先行投資であることに気づかされるのです。まずは身の周りから始めてサークルを描き祈り、また円を描いて祈る。人生計画や家族、経済のこと、宣教の前進や趣味、旅行のことまで、何でも。
読み進むうちに、ふと私たちの教会と重なる場面があることに気がつきました。東日本大震災後の歩みです。多くの方々の祈りに支えられて、私たちは故郷を追われ七百キロに及ぶ旅をしましたが、着地点は故郷から南七十キロに位置するいわき市でした。思い返せばその地は、七十年前初代宣教師が「ここに生まれた教会は、やがていわきでも宣教するようになる」と祈り指差していた地だったのです。私たちは知らずして、かつて宣教師が思い描いていた祈りのサークルの未来宣教地図の中を、流浪し旅していたのです。