特集 物語で伝えるイースター 絵本『イースター』で伝える グッドニュース
青柳 惇
「ぼくたち死んだらどうなるの?」
子どものころ抱いた素朴な疑問であり、また幼心を襲った不安でもありました。現在の「生」は永遠に続くものではなく、やがて「死」がやってくることを子ども心にも知っていたからでしょう。
「永遠」という思いを神様が与えられたのは、人間に対してだけでした。他の動物たちに「永遠の思い」はありません。彼らにあるのは「今」だけです。
この問いに、大人たちは答えました。「それはね、良い子は『ごくらく』へ、悪い子は『じごく』へ行くの。だからいつも良い子でいるんですよ。」
そうは言われても、いつでも良い子でいるなんて、そんなことできやしない。それは子ども心にも先刻わかっていることでした。
他の子が自分の邪魔をすると腹を立てケンカもするし、だれかが良い玩具を持っているとうらやましくて自分もそれを欲しがり、時にはそれを奪おうとする気持ちもわいてくる。また、自分をいつも他の子と見較べて、相手が自分より優れていてもそれを認めず、劣っているとそれ見ろとばかり軽蔑する。―内心に抱くそんな自分の罪を知っていて、またそれを自分の力ではどうしても除くことができない無力さも、幼いながらも意識していたからでしょう。
後年になって聖書に触れて、そんな自分の罪を赦すために神の御子イエス・キリストが身代わりに死んでくださったばかりではなく、その罪の元凶を滅ぼして、三日目に死から復活されたこと、その事実を信じてイエス様のものとされた人は、永遠に生きる新しいいのちに与る、そのことを知ったとき、目が覚まされるような新鮮な驚きと、喜びと感謝があふれました。
聖書は初めから終わりまで、神様の厳しさをともなう愛で貫かれています。旧約聖書と新約聖書を次のように八つの段階に分けてみました。
一 初め(永遠・天地創造以前)
「初めにことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。この方は、初めに神とともにおられた。」(ヨハネ一・一、二)
二 創世(天地創造)
三 堕罪
四 降誕
「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。」(同一四節)
五 贖罪(十字架)
「そのとき、イエスはこう言われた。『父よ、彼らをお赦しください。彼らは、自分が何をしているのかが分かっていないのです。』」
(ルカ二三・三四)
六 復活、昇天
「イエスは苦しみを受けた後、数多くの確かな証拠をもって、ご自分が生きていることを使徒たちに示された。四十日にわたって彼らに現れ、神の国のことを語られた。……イエスは使徒たちが見ている間に上げられた。そして雲がイエスを包み、彼らの目には見えなくなった。」
(使徒一・三、九)
七 聖霊降臨
八 再臨
このうち四から六までを取り上げ、特にイエス様の復活に焦点を合わせて描かれている絵本『イースター あたらしい いのち』(加藤潤子著、いのちのことば社)は、子どもたちにもわかりやすく、イースターの出来事を伝えています。
聖書は、イエス・キリストの十字架の死と復活の事実を知らせる「福音(グッドニュース)の書」です。というのはイエス・キリストの十字架の死は、人間の罪に対する神様の罰を、神様の御子であるキリストが身代わりとなって受けてくださったのであり、イエス・キリストの復活は、神様がその罪を赦してくださった「事実」を告げる「良き知らせ」であるからです。このことを私たちに知らせてくれるのが聖書です。
「キリストは……ご自分を空しくして、しもべの姿をとり、人間と同じようになられました。人としての姿をもって現れ、自らを低くして、死にまで、それも十字架の死にまで従われました。それゆえ神は、この方を高く上げて、すべての名にまさる名を与えられました。」
(ピリピ二・六~九)
昨年のクリスマス、このイエス様の福音(グッドニュース)を信じる老若男女が、子どもたちも加えて絵本劇を実演しました。同じ作者による『くりすます かみさまのおおきなプレゼント』(いのちのことば社)と併せて、「クリスマスからイースターへ」と題して、一度目は近江八幡の集会、二度目は全国と米国・中国の一部を繋いだネット集会で公演を行いました。二つの絵本の、端整でかわいい描写と優しい語り口。
特に子どもたちは、みんなの前で演じることがとてもうれしくて、内心緊張しながらも一字一句間違えないように慎重に、それでも大きな声で目をキラキラさせて、それぞれの役割を果たしてくれました。
イエス様の愛の福音がこのとき、どれだけ子どもたちを捉えたか知る由もありませんが、きっと子どもたちの心のどこかにそれは宿っていて、いつの日か、彼ら彼女らがそれを必要とする時に、あらためて心によみがえらせてくださるのだと確信することができました。
その後みんなで「きよしこの夜」を合唱しました。子どもたちもこの歌はよく知っていて、大声を張り上げて唄いました。もちろん、この後に続く愛餐とクリスマスケーキに胸をときめかしつつ……。
そして最後に、みんなで輪になって唄い、どこで歌が止められるのかドキドキしながら、右手で受け取って左手で隣へ渡すプレゼント交換。
演じるほうも観客もみな大喜び。集会は喜びと感謝と希望に満たされました。
「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」(ヨハネ三・一六)
青柳惇(あおやぎ・まこと)
1938年生まれ。
吉祥寺キリスト集会のベック夫妻に導かれ、58歳の時にキリスト教に入信。著書に『若い日に創造者を覚えよ』(技術経済研究所)、『孫たちへの手紙 イエス・キリストからのグッドニュース』『暗やみから光に』(以上、みなも書房)などがある
加藤潤子 好評既刊
『イースター
あたらしい いのち』
イエスさまの十字架の死、そして復活。あの日、弟子たちが体験した出来事をたどりながら、今も共にいてくださる友なるイエスさまに出会う。日本人作家がやさしい絵で描き出す親しみやすい聖書絵本。
180ミリ×180ミリ
定価1,320円(税込)
『くりすます
かみさまのおおきなプレゼント』
キリスト誕生の喜びが、世界のはじまり・失楽園から十字架・復活、そして今という流れのなかで語られる、これまでにないクリスマス絵本。読み聞かせにもおすすめの一冊。
180ミリ×180ミリ
定価1,100円(税込)