書評Books 森の仲間と一緒に希望の芽を探しに行こう!
日本基督教団・石神井教会会員 竹村典子
『親子で楽しむ ベッドタイム・ストーリー』
小松原宏子 著
吉田ようこ 絵
A5判・定価1,650円(税込)
フォレストブックス
ユニークな森で、たくさんの生き物が泣いたり、笑ったり、怒ったり、心配したりする様子を読み進めながら、読者は楽しく聖書のみことばに触れることができます。
「あ、これは聖書のあのみことばのことだよね。」「あれあれ、聖書のどの箇所のことだっけ(汗)。」なんていうふうに。各章の題名から聖書のお話が想像できるものもあれば、できないものもあったり、想像できると思っても意外なストーリー展開で、「そうくるのか!」とハッとさせられたり。繰り返し読むとそのたびに新たな発見があり、いつの間にか自分もこの森の一員になってしまっているのです。
十二の小さな物語で起きる出来事は、欠けのある私たちでも見方を変えれば必ず光るものを持っていること、平凡に見える日常や、困難や悩みの中にも恵みが溢れていることに気づかせてくれます。子どもから大人までそれぞれの感じ方があるでしょう。
この本のもう一つの魅力は、かわいくて温かい挿絵です。表紙やそれぞれのお話に書かれている絵はもちろん、表紙をめくると見開きに森の図書館を中心とした、この森と川向こうの町も含めた全体図が描かれていて、その中にお話を見つけることができます。ちょっとわくわくしながら見つけるのも楽しみの一つです。
読後、イザヤ書一一章一~一〇節の「エッサイの根株から新芽が生え、その根から若枝が出て実を結ぶ。その上に主の霊がとどまる。……狼は子羊とともに宿り、豹は子やぎとともに伏し……彼のとどまるところは栄光に輝く」を思い出さずにいられませんでした。
本書の中の、「いつもその中で暮らしていた見なれた森は、めぐる季節のたびにちがう装いを見せる、このうえなくうつくしい国でした」(本文一一三頁)の一文にあるような森の中で、自分も森の仲間たちと一緒に探検しながらひこばえの小さな芽を見つけて、そこに一筋の希望の光を共に感じたい―そんなことを思えた一冊です。