特集 災害に教会はどう備えるか 平時から備える五つのアイデア
災害に遭ったとき、私たちはどのように行動するだろうか。話し合っている家庭もあるだろう。では、教会は? 今月は、実際に災害に遭った二つの教会に、当時の様子と、その後の支援などの体験から学び得た「災害前の備え」について聞く。
塩釜聖書バプテスト教会牧師・いのちのパン代表 大友幸証
私たちの教会には、東日本大震災の津波で家屋を失ったり、親戚や友人を亡くされた方々がおられました。ただ、教会堂は高いところにあったので、津波の被害を免れて、震災後、程なくして世界中のボランティアの活動拠点となりました。また、私たちの教会も、自前の支援活動団体「ホープみやぎ」を立ち上げて、宮城県内複数箇所で支援活動を続けました。二〇一七年まで震災支援活動を続け、その後は支援活動の一部であったフードバンク活動を残して、NPO法人「いのちのパン」として、社会福祉協議会や近隣市役所と連携して地域の困窮者支援を続けています。また、二年前からフードバンク活動を始めたい教会のスタートアップ支援事業を始め、最近では海外の災害支援団体と連携して、東南アジアの孤児院ネットワークに日本から食料品を送る事業にも取り組み始めました。
この私たちの経験から、災害に備えるためのいくつかのアイデアを挙げてみたいと思います。人命を守るための基本的な防災に関する知識はインターネットで検索できますので、そちらをご参照ください。今回のアイデアは、教会が災害時に、より積極に地域に貢献するためのアイデアです。
①地域の人々や行政と普段から繋がる。災害に対して、教会は地域も含めて総力戦で対応しなければなりません。普段から教会が、地域の人々や行政と信頼関係を築いていれば、震災時にはあらゆることをその地域で円滑に行うことができるようになります。今私たちが行っているフードバンク活動は、災害が起きた時のための備えでもあります。教会員や牧師が、地域の集まりや活動に積極的に関わることは、災害対応のための良い備えです。
②福祉活動に普段から取り組む。災害時は、落ち着いて物事を考えることはできません。多くの苦しみや葛藤の中、ボランティアや支援金の受け入れをしなくてはなりません。今まで見たことのない光景に、教会の人々は間違いなく戸惑います。その中で、教会が御霊の一致を保たなければ、内側から崩壊してしまいます。
もし普段から、教会全体で福祉の働きのために祈り、学び、取り組んでいるならば、大きな災害が起きても、ある程度落ち着いて教会全体で対応することができます。平時から地域に貢献する福祉の働きを始めることは、災害時に教会がキリストのからだとして動くために必要な土台になっていくと思います。
③教会の中でリーダーを育てておく。最初の教会であったエルサレム教会では、教会にいた寡婦や地域の困窮者に対して、給食活動が行われていました。ステパノをはじめとする教会リーダーたちが、その福祉活動に携わっていました。私たちの教会は幸いにも、災害時に多くのステパノがいました。これらの人々は、震災以前から牧師にリーダーとしての特別な訓練を受けていた人々で、震災時には各拠点の責任を担い、今でもフードバンク活動の中心的な役割を担っていてくださっています。教会で起こりがちなことは、災害が起きた時に、牧師一人に大きな負荷がかかってしまうということです。牧師と共に、教会に与えられた使命を共有するリーダーたちが幾人かでもいるならば、その教会の災害に対する対応は大きく変わります。
④教会ネットワークを築いておく。教会が、普段から地域や、広域の教会ネットワークにつながっていると、何かが起きた時に、そのネットワークから速やかに助けが送られてきます。教会はキリストの手足で、互いに備えられた結び目(エペソ四・一六 新改訳第三版)がつながった時に、より良い働きをします。それぞれの教会に与えられている主からの資源や賜物は違いますので、それを平時から互いに共有しているならば、地域教会全体で災害時の必要に迅速に応えて、活動の持続性を保つことができます。実際に動く教会、後方支援する教会、情報発信する教会、祈る教会など、賜物に応じて何か必ずできることはあるはずです。
⑤神の思いを知る。私はさまざまな災害支援の現場を見せていただく中で、被災地に立たされた教会が、その災害を通して神からの使命を新たに受け取って立ち上がる姿を見てきました。災害への備え、それは神が、その災害を通してなさろうとしておられることへの備えでもあります。アダム以来、罪に汚された自然界はうめいています。それは自然界が人間を祝福するはずの存在であったのにもかかわらず、時として大いに人間を苦しめてしまう存在に堕ちてしまったからです。必ず起きてしまう災害は人間が受け止めるべき現実です。しかし同時に、その過酷な現実の中で、神はご自分の手足である教会を通して、苦しみの中にいる人々に、ご自身の愛を示される方です。この神のお心を教会として受け止めていくかどうかが、災害に対する大切な教会の備えであると私は考えます。
以上が貴教会の今後の災害対応の一助になればと心から願います。神様からの良き備えがあることを祈りつつ。