さわりよみプラス 名画を彩る Vol.2 今月のお題 「放蕩息子の帰郷」
レンブラント・ファン・レイン
1668年/エルミタージュ美術館/サンクト・ぺテルブルグ(ロシア)/油彩・画布/262×206㎝
放蕩していた弟息子が、父親の懐に優しく抱きかかえられている、晩年のレンブラントが描いた名場面です。息子が帰るのを長い間待ちわびていた父親。少々肉がおち、やつれています。優しく息子の肩に乗せている両手が印象的です。
(中略)
この父親とは神自身を表し、息子は私たち人間を表しています。人間は自分の意志で神から離れてしまいましたが、そのことに気づいて神に立ち返るとき、神は喜んで迎え入れてくれるのです。絵の中の放蕩息子は、みすぼらしい服装をし、使い古したサンダルを履いていますが、顔は高貴な王子のような印象を与えます。この父親にとって、この息子がどれほどの大きな過ちを犯したとしても、尊い存在であることを物語っています。
レンブラントは、画家としての絶頂期に「居酒屋の放蕩息子」と題して、酒場で女性(モデルは妻のサスキア)と戯れている得意満面の自画像を描いています。しかし、それとは対照的に、この最晩年の作品は、財産や名声、そして愛する者たちを失ったレンブラントが、父なる神に立ち返っている自らの姿を表しているのではないでしょうか。(出典『巨匠が描いた聖書』からの抜粋)