書評books ありのままの自分を認めて、新しい自分に出会える一冊
嘉手納アッセンブリー教会 牧師 神山美由記
『今日も新しい私に袖を通す』
豊田かな 著
B6判・定価1,320円(税込)
いのちのことば社
仕事、結婚、出産、子育て、夫婦関係、親の介護等、様々な人生のステージを重ねる中で、当然のごとく「成長し続ける自分でありたい」と誰もが願います。しかし、思い描いていた理想の自分から遠ざかる現実を目の当たりにして自信を失い、悶々としたものを密かに抱える女性がどれほど多いでしょう。例に漏れず同様の葛藤を抱えてこられた著者の、一人の信仰者としての心の旅路が記録されています。
家族の感情に対する〝反応〟、人の視線や評価に対する〝過剰反応〟、拒絶に弱く、自己弁護も多かった、という著
者の正直な告白は私自身も共感できるところが多々ありました。読みながら不思議と自分がカウンセリングを受けているような感覚に導かれていきます。だからこそ、「赦せない、祈れない、それがほんとの私。できたら見たくないし、認めたくないです。でもそんな未熟な私をそっと自分で抱いてあげてください。もう一度言っていいですか? そっと抱いてあげてくださいね」(四七頁)との優しい語りかけに思わず涙が込み上げました。「変われない」「克服できない」という自分の限界地点を知ることは挫折でも自己放棄でもなく、成長から成熟に移る第一歩だとこの本から教えられ、心にずっと横たわっていた〝良き信仰者でなければ〟
というプレッシャーからフッと解放されていったのです。
本書の根底にあるのは「境界線」の学びです。著者自身も境界線をご夫婦で学ばれたことにより、関係性が大きく変化したことが記されています。それと同様、「自分の思いや考え、将来の計画ではなく、プライドを捨てて神様の与えてくださった使命の中に歩みたいと強く思えるように」(三五頁)なっていったという著者の心の動きが新しい自分へ出会う大きな鍵だと気づかされます。
一緒に温泉に浸かりながら人生の秋のビジョンをいきいきと語る著者の横顔を眺めていると、夏真っ盛りの私自身もそこ(秋)に向かうのがうんと楽しみになってきました。
教会の女性会や子育てサークル等で本書を用いてはいかがでしょうか。著者の正直なことばを通して、温かく包んでくださる神様の真実な愛に触れる機会となるでしょう。