書評books 聞こえる三者の息遣い

盛岡聖書バプテスト教会牧師 近藤愛哉

 

シリーズ 新約聖書に聴く
『ヨハネの手紙に聴く 光のうちを歩むために 』
遠藤勝信 著

B6判
定価2,200円(税込)
いのちのことば社

 

ヨハネの手紙第一~第三からの二十三の講解説教が収められたこの一冊が、「シリーズ・新約聖書に聴く」に新たに加えられたことを嬉しく思います。
「『みことばを、しっかり見つめ続ける忍耐』を養う……。」「まずみことばの権威の前に頭を垂れ、みことばを語られる神御自身を真に恐れることこそが説教者に、また牧会者に求められている……。」別の印刷物に記されていた著者の言葉ですが、まさにこの本は、みことばの権威の前に頭を垂れながら、神御自身に対する真の恐れとともに、みことばを、しっかり見つめ続けた説教者/牧会者の言葉が綴られた一冊です。頁をめくりながら、これらの説教が語られた礼拝堂に聴衆の一人として私も座り、耳を傾けているような錯覚に陥りました。また、異なる三者の「息遣い」をごく身近に聞き続けるような不思議な感覚を味わいました。
まずは、この現代に生き、すぐ目の前でヨハネの手紙のみことばを熱心に解き明かしてくださる著者の息遣いです。次に、一世紀の教会の兄弟姉妹たちに、「愛する者たち」、「私の子どもたち」と呼びかけながら、与えられた神との交わりという「いのち」の豊かさを綴り、この世の基準をはるかに超えて互いに愛し合うことを勧める牧会者である老使徒ヨハネの息遣いです。そして、一世紀でもこの二十一世紀でも変わることなく、「神の子ども」とされた私たち教会に対する溢れんばかりの愛を隠すことのない神御自身の息遣い。明示された福音に対する確信とともに、重苦しい闇が覆う困難な時代にあっても光のうちを歩むようにと、そのみことばによって迫ってくださる神御自身の息遣いです。
自分が読むだけではもったいない。あの人にも、この人にも読んでほしい。一篇一篇の説教を、夫婦で、家族で、教会で、兄弟姉妹たちと共にじっくり味わい、神のみことばに対する応答として、神が与えてくださっている交わりを築き上げていきたい。そんな思いを与えられています。