書評books 心を憩わす絵本にきっと、出会える
実践女子大学短期大学部 講師 宮木孝子
四六判・192頁
定価1,430円(税込)
フォレストブックス
『絵本の泉』には、「私たちに多様なしあわせのあり方を気づかせてくれる」想像力を養う、四十冊の絵本が八章に分けられ、紹介されています。『どうぞのいす』『花さき山』『だって だってのおばあさん』『はらぺこあおむし』など、みんながよく知る絵本から、学習障害のある少女の試練からの脱出を描いた絵本などさまざまです。各章には、「思いやりの心を育む」「“助け手”の存在に気づかせる」「だれかを大切にする心」「心のゆとりを育む」「その人らしさが大切」そして、「子どもといっしょに楽しく遊べる」「家族の温かさを感じる」「『死』についていっしょに考える」と題があります。そして、各絵本には、対象年齢、あらすじ、作品ガイドがありますが、この作品ガイドが素晴らしく、他にはないものです。
著者は、言葉、文化、児童に関する広範な知識に、時に絵本作家の人生、大切な隣人との思い出、著者自身の人生や聖句を用いて、作品のメッセージを語ってくれるのです。そこには、本書で二回引用されている、「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」(イザヤ43・4)という神の愛が、基調として貫かれています。『絵本の泉』を読み終えたとき、著者がどれほどの愛をもって、一冊ずつ、絵本に向かい、渾身の力をもって執筆したかがわかります。クリスチャンである著者は、神から与えられた試練を通されたことにより、より深い作品理解を得られたのでしょう。本書に、「死」についての章があるのも頷けます。
こうして生まれた『絵本の泉』から、著者は、読者に語ります。絵本を読み語るとき、読み手の愛情は聞き手に伝わり、そのときの双方のコミュニケーションが、子どもの命を深いレベルで支え、心を育む糧となる力をもつ、その絵本の力は、子どもだけでなく、大人にも新しい生への気づきをもたらしてくれるのだと。
読み語る絵本を探す方にとどまらず、今、つらい状況の中にある方にも、本書を薦めたく思います。心を憩わす絵本にきっと、出会えることでしょう。
(月刊「いのちのことば」二〇一九年二月号より)