連載 リラ結成30年 いつまでも賛美をこの口に 第2回 主よ、あなたの 声を聞かせて 塚田 献

LYRE(リラ)
1993年に東京基督教大学の神学生たちによって結成された賛美グループ。卒業後、コンサート活動をしながら、6人のメンバーは各々のところへ遣わされ、主のみわざに励んでいる。

 

今から三十年以上前の話。その頃、自分がどう生きたらよいのか全くわからなくなり、ただ誰も自分を知らない世界で生きたいと願っていた。誰かが悪いわけでもなく、人生に絶望する決定的なことがあったわけでもなかった。なのにそれほどまで自分に絶望し、生きる資格がないと感じるようになったのは、幼い頃から信じていたまことの神を自分の心から追い出し、確実に「いらない」としてしまったことによるものだったと、後からわかった。
そんなあわれな僕を、家族や友人は心配し祈り、助けの手を差し伸べてくれたが(それは神様から差し出された助けの手であった)、それさえ振りほどいて、真っ暗闇の中で生きるしかないと心に決めていた。しかし、そんなちっぽけな決意で自分の人生を生き抜く勇気のなかった僕は助けにすがるしかなく、ブラジルに日本から遣わされていた宣教師家族にお世話になることになる。
心を閉ざしたまま全く知らない異国の地に着いたが、そこで家族のように迎えられた。ブラジルの明るさと、神から与えられたいのちを喜んで生きようとするブラジルの人たちの姿に、自分の知らない人生がそこにはあるのではないかと、心が少しずつ軽くなっていったのを覚えている。
ただ、根本的な問題は依然として残っていた。大好きだった神のもとに戻りたいと思っていても、「そんな資格はおまえにはない」という声が聞こえ、「消えたい」と思う気持ちを拭い去ることはできなかった。それでも僕の周りにいた人たちは、イエス・キリストを通して現された神の愛は人知をはるかに超えたものである、と伝え続けてくれた。そのおかげで、どんなに裏切っても、拒んでも、このいのちが神にとって尊く、なおもご自身の愛を僕に示してくれていると、もう一度信じられるようになっていった。
このように信仰が回復に導かれる中で賛美を作り始めた。それをカセットテープに録音して、遠く日本の家族に送るようになった。拙い小さな賛美だが、家族に元気になったよと伝えたかった。
その中の一曲が今月の曲。歌詞にある「主よあなたの御前にもう一度引き寄せて」という切なる願いから生まれた曲。また「遠くに聞こえた歌がよみがえる」の歌詞にある「歌」とは、聖歌六五六番の「わたしのように」のこと。ある日部屋に一人でいた時、子どもの頃よく歌っていた賛美をどうしても思い出したくて、歌詞を三番まで思い出した時、大泣きした。そんな思いの中で生まれたこの賛美は、今も歌うたび、あの頃の自分に現してくれたイエス様の愛が迫ってくる。

 

主よ、あなたの声を聞かせて
詞/曲  塚田 献

さびついた心抱えて
時には倒れて
けど信じている者が待つものは
永遠に続く光の世界

差し伸べられた御手を
振りほどき歩いた時にも
大きなあなたの愛によって
遠くに聞こえた歌がよみがえる

主よあなたの御前に
もう一度引き寄せて

主よあなたの声を聞かせて
とこしえに変わることのない言葉
わたしが歩む道の全てに
あなたに導かれて進むだけ

空を見上げながら
あなたを感じて
降り注ぐ光と共に
勇気と力が生まれる

主よあなたの声を聞かせて
悲しみに沈むような時には
天から来る力と御言葉を
握りしめ抱きしめて歩こう
©Sasagu Tsukada