連載 ひきだしの中の信仰 第二回 前向き、に生きる

イラストと ことば
林 くみこ

グラフィックデザイナー。「よきおとずれ」を運び、互いに祝福し合うために用いてください。という願いをこめて、聖書のメッセージやみことばからイメージしたイラストのポストカードをゆるゆる制作中。東京・奥多摩にあるクリスチャンキャンプ場・奥多摩福音の家スタッフ。

 

今月の聖句
コリント人への手紙 第一
13章13節

 

聖書のことばを、どんな世界で生きていた人がどのように聞いていたかを知ることは、みことばの理解や信仰を豊かにしてくれる。たとえば十戒を、父親がわが子を膝に乗せて教えるイメージで聞いた時、厳しさではなく、豊かに生きてほしいと願う神さまの慈しみのまなざしを見ることができた。ことばだけでなく、そこに込められたこころに少しでも触れることができたらと、読めもしないヘブル語やギリシア語を調べてみたりもする。
『旧約聖書のこころ』(雨宮慧、女子パウロ会)という本の中で、聖書の時間把握について書かれていた。「将来」と訳されているヘブル語(アハリート)は「背中・背後」を意味すると同時に「未来」を意味し、「過去」を意味する語(ケデム)は「前」も意味することばだという。どうやらわたしたちは、過去を目の前に見ながら、背後にある見えない未来に向かって、後ろ向きに歩いているらしい。そうだとすると「前向きに生きる」とは、過ぎた日に向き合って生きていることなのかもしれない。
奇跡を祈りつつ、叶わなかった時に失望し信仰を失うことがないよう祈る自分がいて、奇跡を祈りきる信仰について考えていた年に、このイラストを作った。恵みを数えるはずが、失敗や失望、疑いの記憶にたびたび目を奪われる。けれど、信仰や希望が揺らぐ時にさえ、その過去を導いてこられた神さまの変わらない愛と約束が記された聖書がある。その気づきを覚えていたいと思った。