書評books 歌い継がれた名曲に込められた 平和への思いが漫画に

福音歌手 森 祐理

 


『漫画 幸せなら手をたたこう 誕生物語』
西岡由香 作 木村利人 監修
A5判・160頁 定価1,540円(税込)
フォレストブックス

 

「幸せなら手をたたこう♬」。誰もが、子どもの頃から口ずさんできた歌ではないでしょうか。歌い出すと自然に手をたたいてしまう不思議なメロディ。日本だけでなくいろいろな国の言葉で歌われているので、私はてっきり外国曲だと思っていました。それがなんと、日本の青年によって書かれた詞であり、しかも戦争の傷跡を通して平和を祈る願いから生まれた歌だと知り、本当に驚きました。その青年、木村利人さんとは、数年前にお会いして直接お話を伺うことができました。すでに八十歳を越えておられましたが、輝く笑顔で、ご自身の体験から平和の大切さを語ってくださり、私にとっても特別な祈りの歌となったのです。

そのストーリーが、このたび「漫画」となって出版されました。漫画は、子どもにも読みやすいですし、これは良い着想だと気楽にページを開いたのです。読み始めて驚きました。単なる「歌の誕生物語」ではなく、悲しい戦争の歴史、二度と繰り返してはならない悲劇が、細やかに描かれています。戦争により、どれほど多くの人々が傷つき、苦しみを抱えて生きなければならないか、読みながら深く胸に突き刺さりました。重いテーマでありながらも明るいタッチで描かれていて、「ゆるしと和解」という、この歌の持つメッセージを改めて心に刻むことができたのです。

今、世界では戦争の悲劇が繰り返されています。私は、一昨年ウクライナへ赴き、避難民の子どもたちと一緒にこの歌を歌いました。悲しい目をした子どもたちの表情がゆるみ、嬉しそうに手をたたいてくれた姿は、生涯忘れないでしょう。今こそ、平和を祈るこの歌が、必要な時代だと思います。この作品は、「漫画」という枠を超えて、幅広い世代の方々に届くことのできる親しみやすい歴史書のようにも感じました。
今や世界中で愛されるこの歌を通して、「平和をつくる者は幸いです」の御言葉を、態度で示していきたい、そう心から思わされた作品です。本当にお薦めの一冊です!