書評books 歴史の問いかけをしっかり受けとめるために

飯能キリスト聖園教会 牧師 若井和生

 

『増補改訂版 日本キリスト教宣教史 ザビエル以前から今日まで』

中村敏 著
A5判・488頁 定価4,840円(税込)
いのちのことば社

 

本書は最初、プロテスタント宣教一五〇周年を記念した二〇〇九年に出版されました。あれから十五年の時を経て、増補改訂版として再版されたことをとても嬉しく思っています。
本書を通して私たちは、極東の日本に福音を伝えようとした宣教師たちの情熱に心を熱くさせられます。様々な苦難を覚悟で福音を信じ、信仰の道を全うした多くの先人たちの姿に励まされます。さらに、横浜、熊本、札幌などのいくつかの場所を起点として福音が日本全国に届けられ、各地に教会が建てられていった御国の展開に、心をワクワクさせられます。
そして、これらの歴史が全部自分につながってくることを意識するときに、今、自分がキリスト者とされていることが決して偶然ではなく、多くの先人たちの祈りと努力の結果であることを知らされ、深い感動に満たされるのです。
同時に考えさせられることもあります。教会は目指すべき目標と方向をもっているはずです。旧約から新約へ、約束から成就へ、御国の到来から御国の完成へ、目指すべき方向を私たちは絶えず聖書から教えられてきたからです。ところが、歴史を概観して見えてくるのは、時代と向き合いながら、対決力に乏しく、時代に流されることの多い日本の教会の姿ではないでしょうか。
本書には、二〇〇九年より二〇二三年まで最近の時代状況とキリスト教との関わりについての記述が、新たに加えられました。昨今の時代の変化の激しさと複雑化する時代様相には、圧倒されるような思いになります。
混迷極まる今の時代の中で、教会もまた漂流してしまうのでしょうか。今こそ私たちは歴史の問いかけをしっかりと受けとめながら、主の指し示す方向へと自らを定めていく必要があります。そのために、本書が大きく用いられることを祈ります。