連載 リラ結成30年 いつまでも賛美をこの口に 第8回 すばる座 宮脇(若林)栄子
LYRE(リラ)
1993年に東京基督教大学の神学生たちによって結成された賛美グループ。卒業後、コンサート活動をしながら、6人のメンバーは各々のところへ遣わされ、主のみわざに励んでいる。
私は小さな田舎町に住んでいる。結婚を機にこの町に住むようになった。実家は線路の近くで、いつも電車の音を聞きながら眠りについていた。そんな私は外の音がしない夜に慣れず、「静か過ぎて寝られない」と言っていた。しかし今ではこの静けさがないと落ち着いて眠れないほど、すっかり田舎暮らしに慣れてしまった。
結婚して初めに住んだアパートは二軒が繋がる長屋で、隣にはこのアパートを建てた大工さんご夫妻が住んでいた。庭に出ると大きな畑が広がり、奥に林があった。 朝は鳥の囀りで目が覚め、白鷺が羽を広げ飛ぶ姿や、雉がけんけんと鳴きながら畑を歩いているのが窓から見えた。林には狸が住んでいて、子狸たちと鉢合わせしたこともある。どこからか迷い込んだ鶏が庭に住み着いて困ったり、蛇がやってきて棒で追いやったり……なんとものどかな時間が流れていた。
何よりも庭から見上げる空が本当に素晴らしかった。毎日変わる空の景色は大きなキャンバスに描かれた絵画のように美しかった。特に夜空を初めて見た時、あまりの星の美しさに感動したのを覚えている。
冬の夜、お隣さんご夫妻とうちの夫婦で星空を見た時があった。とても寒い夜で、みんなで温かいコーヒーを飲みながら流れ星を待っていた。すると隣のご主人が空を指して「あれがすばる座ですよ」と教えてくれた。人差し指の向こうに小さな星のかたまりが見えた。見える星と見えにくい星がある、そのモヤモヤしたかたまりがすばる座と聞いた時、このみことばを思い出した。
「あなたはすばるの鎖を結ぶことができるか。オリオン座の綱を解くことができるか」(ヨブ38・31)
聖書に書かれている「すばる座」を今この目で見ていることに、私は大きな感動を覚えた。遠い昔、すばる座を見ながら創り主を感じ、その御業を賛美した人たちがいた。そして今、この小さな田舎町で同じ星を見上げ、創り主であられる神様を思っている私がいる。長い時を経て信仰が繋げられてきたこと、そこに自分もいることが嬉しかった。そんな私たちが信じている神様は、天地を創られた方であり、星の数もすべてご存じであられる。そんな偉大な方が、小さな私の誰にも言えないような心の内を知っていてくださるなんて……。感動して鼻の奥がツーンとなったことを覚えている。
今も夜空を見上げるとすばる座を探してしまう。あの日の感動を思い出すために。
すばる座
詞/曲 若林栄子
冬の夜空の下で
私はずっと見ていた
何千年も前から変わらない満天の星
昔の人たちがその星の名をあげて
創り主を思ってた輝きを
今見つめている
白い息と共に思いは天に向かうよ
あなたの創られた果てしない空の下で
すべての星の数を知っておられる方が
私の この私の思いを
知っておられるなんて
星の瞬く音が聞こえる 静けさの中
すばる座の連なりを
目を凝らし 探し続けてた
昔の人たちの祈りは時を越えて
創り主を思ってる
私にもつなげられている
白い雪のように思いは降り積もるよ
あなたに見いだされた喜びはこの心に
すべての時を紡ぎ
治めておられる方が
私の この私の思いを
知っておられるなんて
© Eiko Wakabayashi