書評books 「初代教会の終末論に帰る重要性」を証しする書 !
日本福音教会一宮チャペル牧師、一宮基督教研究所主宰者 安黒 務
『黙示録の希望 終末を生きる』
岡山英雄 著
B6判・320頁
定価2,420円(税込)
いのちのことば社
「光は闇の中に輝いている」――本書は、闇の中に輝く光について書かれた書である。各章各節はその希望が光であることを証しし、すべての章は「それゆえ黙示録は希望の書である」という神へのほめたたえで結ばれる。
二十一世紀になり、立て続けに戦争、震災が起こり、気候変動、疫病の蔓延、富の集中、情報の真偽の不透明化、と闇が深くなっている。世界に何が起こっており、それはどうなっていくのか、そして私たちはどう生きていけばよいのか。本書は、そのような闇に覆われた世界のただ中で、輝くともしびを「ヨハネの黙示録」に見いだしている。
世には「厭世的で悲観的な終末論」や「現世的で楽観的な終末論」の両極に向かう諸説が散見される。しかし『黙示録の希望』はそれらとは異なる。本書の礎は、著者の神学研鑽の結実としての三部作「患難期と教会」(『福音主義神学』第31号)、『小羊の王国』『ヨハネの黙示録注解』(以上、いのちのことば社)にある。それらは「黙示録はきわめてリアルに世界の実相を明らかにするとともに、やがてその暗闇の力が打ち砕かれ、正義と真理が最終的に勝利し、平和と恵みが全地を覆うと宣言している」(本書四頁)という一貫した視点から記されている。
本書は、その内容の総集編である。そのような希望を抱いて現代世界と関わることを励ます指南書である。全体は、第一部 希望の理由、第二部 希望の戦い、第三部 希望の完成で構成され、「初代教会の終末論に帰る重要性」を惜しみなく証ししている。
「あとがき」によれば、本書は当初、最近の終末論の問題点を詳しく扱うかたちで準備されたが、黙示録の「希望」そのものに焦点を合わせる方向に軌道修正された。それは著者の「未信者にもわかる黙示録の本を書きたい」という情熱の発露であり、諸説の扱いにおいては「黙示録の真の希望が明らかになれば、あえて直接批判せずとも、真理はおのずから明らかとなる」との信念が表れている。
本書が闇の中の光として、広く豊かに用いられることを祈っている。