書評books 心が温まり、信仰が強められる良書
兵庫大学大学院非常勤講師 窪寺俊之
『幸せのかたち』
柏木哲夫 著
B6判・104頁
定価1,320円(税込)
いのちのことば社
クリスチャンのホスピス医、精神科医の柏木哲夫先生が「幸せのかたち」について書いた新著が出ました。柏木先生の優しさや人間洞察の深さに心引かれる読者は多いと思います。人間の苦しみや悲しみは絶えませんが、柏木先生の言葉に慰められ、励まされた方は多いにちがいないでしょう。前半は「近畿福音放送伝道協力会」の月刊誌『福音の光』に掲載されたものに加筆、後半は淀川キリスト教病院理事長の笹子三津留先生との対談です。
今回の本を書かれた意図が冒頭に書かれているので、引用してみます。
「幸せのかたちは、人、時、場合によって変わることがわかりましたが、たましいの平安があるかないかが、決定的に大切であると思うようになりました。人生の様々な段階で直面する事態は異なるとしても、その対応の仕方は神の御手の中で導かれ、摂理を受け取り、委ねることができれば幸せを体験できるのではないか、と」(四頁)。
ここに、柏木先生の信仰が記されているように思います。
後半は笹子先生から柏木先生に質問が出されて、それに応える形式をとっていますが、個人的経験も語られていて、読む者は引き込まれます。十三のテーマがありますが、「入信と受洗」「精神医学をアメリカで学ぼうと思った動機」「ユーモアとなぞなぞ」「多くの人がもつスピリチュアルペイン」「患者さんにとっての幸せ、喜びとは―共に悲しみ、共に喜ぶ」などです。
笹子先生は、「私は診察の際、ときどきお祈りもします。手術の前の患者さんにお祈りもしました。診察室ではなく、手術室で執刀の直前にですね。私の場合、医療事務補助者が外来診察では隣にいて助けてくれるのですが、その人は『この先生、変わった先生だ』と思っているかもしれません」(九六頁)と語っておられます。こうしたクリスチャン医師がいてくださることは、治療を受ける患者さんにとって救いではないでしょうか。
内容は読みやすく、心が温まり、信仰が強められる良書です。多くの方に読んでいただきたい本です。