書評books 歌った瞬間にひざまずきたくなる曲

東栄福音キリスト教会主任牧師 遠藤 稔

 


『あたらしい歌3』
福音讃美歌協会(JEACS) 編
A5判・52頁
定価990円(税込)
いのちのことば社

 

二〇〇九年に二十曲を収録した『あたらしい歌』を出版し、二〇一二年に五百六曲の讃美歌を編集し出版された福音讃美歌協会委員の先生がたの膨大な作業を遠くから見ながら「すごいなー、本当に作ったんだ」と敬服させられたのを思い出します。本当にすごいのはその後です。完成した讃美歌集に安住することなく、時代とともに変わっていく言葉と音楽スタイルに逃げずに向き合い、検討を続けていく態度には驚かされます。今も取り組み続けてくださっている先生たちに脱帽です。
福音讃美歌協会は、コロナで活動が制限される状況に合わせてウェブセミナーの開催を始め、讃美歌の作詞作曲についての学び、新作の制作、公募、さまざまな事柄についての吟味などを続けてきました。
今回の『あたらしい歌3』に収録された曲を見て、その音楽のジャンルの幅広さに驚きました。クラシックの和声学の伝統に沿った四声体の伝統的な曲があり、一方、ワーシップソングの中でも特に難易度が高いと言われる「夢見人(ドリーマー)」(九番)が採用されていることは驚きです。譜面で見るだけでも全くの別世界です。
また二二番に収録された「御父と御子と聖霊に」は、一般的な頌栄のスタイルに加え、曲中での祝祷ができるような〝隙間〟も想定されていて、かつ礼拝からこの世に遣わされていくことを宣言するという、今までありそうでなかった大胆な曲です。無駄のない言葉とメロディーが心に刺さり、歌いながら自然と涙が出てきます。
一六番「あなたは私を愛しますか」は、みことばをシンプルに歌った歌詞で、メロディーもほとんどが四分音符だけの単純なものです。ところが、飾りや主張がないからこそ、あわれみと愛のメッセージがストレートに心に迫ってきます。いつもジャズやポップスの複雑なコードや編曲を好んでいる私ですが、歌ってみた瞬間に思わずその場にひざまずいてしまいそうな聖なるご臨在を感じます。
ぜひ手に取って、一曲ずつ、ゆっくりと譜読みをし、ゆっくりと歌ってみていただきたいと思います。