連載 ひきだしの中の信仰 最終回 神のもどかしさ
イラストと ことば
林 くみこ
グラフィックデザイナー。「よきおとずれ」を運び、互いに祝福し合うために用いてください、という願いをこめて、聖書のメッセージやみことばからイメージしたイラストのポストカードをゆるゆる制作中。東京・奥多摩にあるクリスチャンキャンプ場・奥多摩福音の家スタッフ。
今月の聖句
ヨハネの福音書1章14節
ことばは人となって、私たちの間に住まわれた
“The Man and the Birds” という現代版クリスマス・ストーリーがある(※)。アメリカのラジオ番組で朗読されたものを関根一夫牧師が和訳されて、先生のメールマガジンを通して、わたしはそのストーリーに出合った。
物語はクリスマスイブの夜。教会で語られる「神が人となる」を受け容れられない男は、礼拝に出かける家族を見送り一人家に残った。外は雪になり、彼は吹雪の庭で逃げ場を探す鳥の群れを見つける。かわいそうに思い、安全な場所へ導こうと手を尽くすけれど、彼を恐れる鳥たちは逃げ惑うばかり。そんな鳥たちを見て、男は「自分が鳥たちの仲間になって、鳥たちの言葉を話すことができれば」と思い至るのだ。
わたしは、神のことばが人となる、に「神のもどかしさ」を思う。聖書を通して、神は、どんなに人を愛しているかを繰り返し語る。けれど、どれだけ語っても伝わらない。そんな人間への憐れみ、一人として滅びてほしくない「もどかしさ」が溢れて、人間の言葉を話す、人間の仲間としてこの世界にやって来た。それが神の子、救い主イエスだ。
先日、母を看取る時を過ごした。聖書を読むこともなかった母のために、わたしは何もできなかった。けれど反対に、母の苦しみのうちに主がおられると教えられた。誰よりも主が、すべての人を救いたいと願われ、わたしたちの日々の中に来てくださる。だからせめて、その「もどかしさ」を共にしたいと願う。「主よ、わたしたちに出会ってください。」