書評books 人の中で人は癒やされ、成長する
東京センターチャーチ スタッフ 下村羽妙
『コミュニティで支える“心の育ち” being《存在》を大切にするということ』
田中哲 著
B6判・120頁
定価1,430円(税込)
フォレストブックス
「子どもはホームに生まれ、コミュニティで成長し、やがてソサエティ(社会)に出てゆく。」
今から二十年ほど前、当時三人の娘を育てていた私にとって、道しるべとなった田中先生の言葉です。今回、待望の新刊のタイトルを見て、今教会に、また社会に置かれている私たちに求められている使命がここにある、そう感じました。発刊を心から感謝します。
少子化が進んでいるにもかかわらず、子どものさまざまな問題、不登校やいじめ、発達障害や非行などの問題が減らないのはなぜなのか。昨今「子どもの居場所」を意識した活動がずいぶん増えました。しかし、行かなければならないと感じる場所はもはや「居場所」ではない。私たち大人はいったいどのように子どもを育て、子どもの居場所となれるのでしょうか。
本書では、目には見えない「子どもの心の育ち」について、四つの区分によりたいへん論理的な解説がなされています。問題行動に対し、そういうことだったのかと気づきを与えてくれます。圧倒的なdoing社会に生きる私たちがちょっと立ち止まって、神さまの視点を取り戻す助けとなる内容です。「being(あり方)のことを考えずにdoing(行動)を変えていこうとすることは、治療でも指導でもなく、支配でしかありません」(本文九五頁)。
昨年秋、田中先生に子育て支援講演をお願いしたところ「ここで私が話し、熱心に聴く聴衆がいる。私自身のbeingがアップする講演だった」、終了後、そんな感想を述べられました。イエスさまが人となられたように、人と人とのリアルな関わりの中にこそ、人は真に癒やされ、成長するのだとあらためて教えられました。
「最近あの子のbeingが落ちてるんじゃないかな……」そう気づいてあげられる人が一人でも、そばにいてくれたら。本書が多くの方に届けられ、用いられることを願ってやみません。