特集 復活の喜びを伝える 聖書を生活のあらゆる面で分かち合う 紙面を通して対話できるツール「福音版」
クリスチャン新聞顧問 根田祥一
クリスチャン新聞「福音版」は、いのちのことば社が発行している出版物の中でとりわけ、文書伝道に用いられてきました。読者からは「私はクリスチャンではありませんが、クリスチャンの友人からもらいました」、「教会で渡され、聖書のいろいろな教えがわかるので読み続けたいです」などの声が寄せられます。
一九六七年に週刊クリスチャン新聞を創刊した先達には、当初から「新聞伝道」の意識がありました。イエス・キリストの福音を「グッドニュース」として届けたい、という願いです。クリスチャンの証しや教会の魅力を伝える記事は、確かに福音のニュースです。しかし、信徒や牧師向けの教会運営などの記事も載るので、読者像を絞り込むことが難しいこともあり、創刊から七年目、伝道に特化した月刊「福音版」を開始しました。
タブロイド四ページで価格も抑えたので、教会で多部数購読して近所に配ったり、求道者に渡したり、教会員が友人にプレゼントするなど、「新聞タイプのトラクト」として定着してきました。個人的に何部か購読して伝道に使っているケースもあります。夫婦で先にクリスチャンになった夫が、教会で受け取った福音版をさりげなく居間のテーブルに置いておいたら、教会に偏見を持っていたエホバの証人の妻の目に触れ、記事の内容に魅力を感じて妻も教会に足を運び信仰を持った、という報告を聞いたこともあります。
また特に、現在のカラー印刷になってからは、教会の看板に毎月掲示している教会が多くあります。一面に美しい花や景色の写真を大きく載せているので、教会の前を通った人が目を引かれて立ち止まり、記事を読むことも少なくありません。見開きの四面には人物の表情豊かな写真を大きく使い、人生の証しを紹介しています。人は人の経験や生き方に興味を持つものです。「読んで感動しました」という声が寄せられるのは、たいてい四面の「ひと そのあしあと」の記事です。
取り上げる人物は、話題のアーティストやアスリート、専門職、著者、環境活動家、紛争解決の現場で奮闘している人など、さまざまな分野に及びます。年代や国籍も多様です。「クリスチャン新聞」というニュース媒体ゆえの情報網や取材体制により、毎月多彩なクリスチャンの生き方を取り上げることができます。
読者の信徒の方からは時々、クリスチャンとしての生き方や信仰生活の養いに役立つ記事を載せてほしいといった要望もありますが、福音版では多くの情報の中から選別して、クリスチャン以外の人にわかりにくい内容はできるだけ扱わないようにしています。あるいは、噛み砕いて誰にでも伝わる表現に置き換えたりもします。しかし、伝道用だからといって、聖書の初歩的な教えに限定しているわけでもありません。
聖書には、クリスチャンでもクリスチャンでなくても経験すること、生き方を考えさせられるようなエピソードが出てきます。特に一面のメッセージでは、そうした聖書の箇所を取り上げるよう心がけています。クリスチャンが読んで心を動かされたら、福音を伝えたい友人や家族に「この記事を読んでこう感じたけど、どう思う? 読んでみて」と話題を共有することができます。月刊なので対話を続けていきやすいことも利点です。
そのようにして「福音版」という名前で半世紀にわたり発行を続けてきましたが、数年前、全ページカラー化に切り替えたのを機に、〈聖書をいつも生活に〉というキャッチフレーズを一面に大きく掲げました。聖書は私たちの実際生活に励ましや慰めを与え、生きる力になることを前面に打ち出したのです。クリスチャンでなくても、聖書を知りたいと思っている人はたくさんいます。一面の「今月の『聖書』は……」では、単に聖書の良いお話や倫理的教訓を紹介するのではなく、日常に起こるさまざまな出来事に関連させて聖書が何を教えているのかを分かち合うようにしています。時に深刻な事件や災害、国際情勢などが人々の関心事であれば、その困難な状況の中でイエス・キリストはどう語りかけているのか? 聖書に登場する人々に神様はどのように恵みを表したのだろうか? と問いかけもします。
中面のコラムでは、料理や映画、文学、芸術、日常の話題のエッセイなど、私たちに身近な幅広い分野を通して、聖書の良い知らせ(=福音)がいつも生活のただ中にあることを表しています。
発行元のいのちのことば社は、一九五〇年の創立以来、自分たちの働きは「文書伝道」であるというアイデンティティーを大切にしてきました。書籍、雑誌、新聞などの形態からは「キリスト教出版社」に見える面もあると思いますが、書籍でも雑誌でも、信仰の養いに役立つ文書を提供すると同時に、つねに文書を通して福音を伝えることを目指してきました。読者の皆さんも、それらを読んで他の方々に分かち合うことによって、この「文書伝道」のワクワクに参加していただくことができるのです。
※「クリスチャン新聞福音版」ためし読みはこちらから
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