ブック・レビュー 『それでも神は実在するのか?』
杉山圭司
日本福音キリスト教会連合 蓮田キリスト教会
裁きと地獄、不公平、救いの排他性など難問に挑む
神学者ジェラルド・L・シッツァーは前書きで、著者は「神の存在と苦悩、神の裁きと地獄、不公平、救い主イエスの排他性といった難問に挑み、また複雑な内容の話にも臆することなく向き合っている。読者に迎合すること、また更なる混乱を招くだけの表面的な結論に安住することを断固拒否する厳しい姿勢を貫いたにもかかわらず、インタビューの内容をまとめたスタイルの本書は、驚くほど読みやすく楽しい」と本書を紹介する。心から賛同する。本書は、キリスト教への八つの反論にきめ細かく「それでも神はおられる」ということを論じる。具体的な反論は次のようなものだ。◇悪や苦難がこの世に存在する以上、「愛の神」は存在しえない◇神の奇蹟は科学の法則に相反し、奇蹟は真実たりえない◇生命の神秘は進化論が解明し、神は必要ない◇罪のない子供を見殺しにするような神は、賛美に値しない◇愛の神は人間を地獄で苦しめたりしないはず◇キリスト教史が抑圧と暴力に彩られているのはなぜか、などである。
これらに答え、結論において大変重要なことを取り扱う。リン・アンダーソンの言葉を引用して、「人があれこれ言う建前をちょっとつついてみると、その下に『信じる意思』か『信じない意思』のどちらかが顔を出します。これこそが、問題の核心」なのであり、そこをよく吟味する必要がある、と。まさにそのとおりであって、そこに働かれるのが聖霊なる神なのだと思わされた。
ただ、第三章は「進化説」を盾に神はいない、と主張することへの反論であるが専門的すぎるので、バランスを考えると、もう少し平易でコンパクトにまとめられていたら、さらに良かったのではないだろうか。
前書『ナザレのイエスは神の子か?』と同様に本書も、信じさせるためというよりは、すでに信じている者の確信の一助となる書であると言えるだろう。信仰者の整えのために、大いに用いられることを期待したい。