時代を見る目 129 世界に目を向けて(2) 希望を見いだす力

片山信彦
特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン 常務理事・事務局長

 最近は、テレビや新聞で開発途上国の子どもたちの様子が伝えられることが多くなりました。スラムの中でごみを拾いながら生活する子ども。ストリート・チルドレンと呼ばれる、路上生活を余儀なくされる子ども。あるいは、難民となって、極度の栄養不良に陥った子ども。両親をHIV/AIDSで亡くし、孤児になってしまった子ども。銃を持って戦場にかり出される十歳前後の子ども兵士……などです。

 モンゴルで、マンホールの中で生活する子どもたちを支援する施設を訪問したことがあります。そこに、両親が貧困の故に街角に置き去りにした赤ちゃんが収容されていました。以前マンホールで生活していた子どもたちが、この赤ちゃんに「めぐみ」という意味の「オクノ」と名づけ、交代で食事をあげたり、シャワーに入れたりして、一生懸命に育てていました。自分たちの将来の希望をこの赤ちゃんに託し、自分たちも強く明るく生きようとしていました。

 バングラデシュのある地方を訪問した時には、ある一家に出会いました。電気、水道はもちろん、トイレもない、道端に立てた八畳ほどのバラック小屋に住んでいました。その小屋に、一家七人が生活していました。十二歳くらいの長女は妹や弟の世話をし、家の掃除もしています。経済的な余裕もなく、住所不定のこの家族には行ける学校もないのでしょう。

 一緒に食べようと手に持っていたキャンディーをいくつか、その少女に手渡しました。すると、目を輝かせてとても喜び、家の中へ駆け込んで年老いたおばあさんに見せ、さらには母親に全部渡していました。自分だけで楽しむのではなく、家族みんなで小さな喜びを分かち合おうとするこの行動に、何とも言えぬ清々しさを感じました。

 開発途上国に住む子どもたちは、多くの困難や危険の中におり、日々生きるための戦いを続けています。しかし、その子どもたちから私たちは多くのことを学ぶのです。生きることに対するひたむきさ、明るさ、清々しさ、共に生きることの喜びや素晴らしさ、そして何よりもどんな中にあっても希望を見いだす力強さを教えられるのです。