時代を見る目 138 牧師のメンタルヘルス(2) 牧師にOKサインを

賀来周一
キリスト教カウンセリングセンター相談所所長

 牧師はかなり多くの局面でストレスを感じるようです。まず、全知全能性を期待されます。すべてにおいて模範的でなければならず、何事も熟知していると期待されがちです。つまり知らない、できないと言えないつらさを抱えるということでしょうか。また多様なニードに対応しなければなりません。教会にはいろいろな人がいます。それだけに牧師の対応も複雑性かつ多様性が求められます。一方、教会というところは、一般の社会よりも目標の設定水準が高いといわれます。ですから、牧師はよほど高い目標を達成しなければ、評価されることがありません。

 牧師個人の立場でも、いくつかのストレス領域が考えられます。そのひとつに牧師間の競争意識が挙げられます。神学校卒業後十年間は、とくに競争意識が強いといわれます。どういうわけだか彼のほうが大きい教会に赴任したとか、努力したわりには他教会とくらべて教勢が伸びない、と自分とほかの牧師を比較し、競争意識を燃やすのです。

 さらには家庭のなかに問題を抱えることもあります。牧会はしばしば家族に犠牲を強いることがあります。そのしわよせが家族や夫婦間に現れ、緊張をもたらすことも珍しくありません。さらには信仰的なこととして、牧師個人の召命観が確立していないと、内面的な葛藤が起こって、伝道・牧会に一生懸命のように見えても、ある種のぎこちなさやかたくなさを抱え込むことがあります。

 そのほか、女性牧師が抱えるストレスもあります。男女共同参画の時代とはいえ、まだまだ男性優位の社会です。教会も例外ではありません。その中で女性が単独牧師(Solo-pastor)である場合の難しさがあります。出産・育児と牧会の両立、男性牧師との対等な活動など、女性牧師の課題は多いと思われます。また夫婦でともに牧師である場合、役割分担や信徒の期待度のちがいから緊張を取り込むこともあります。

 こうした牧師のストレスは、表に出すことがなかなか許されません。わがままや甘えと受け取られることがあるからです。それだけに信徒の側の理解を必要とします。私自身がとても助けられたことは、信徒の方からの支えや励ましでした。ある方は説教の後、かならず一言、感謝の言葉を添えてくださいます。緊張がほどけて安心感がただようのを感じたものです。みなさんも、時に応じて、牧師にOKサインを送ってみてください。