ビデオ 試写室◆ ビデオ評 93 「ダ・ヴィンチ・コード
ザ・トゥルース」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
『ダ・ヴィンチ・コード』おもしろい! だけど歴史検証には耐えられない
空前のヒット中の『ダ・ヴィンチ・コード』はミステリー小説です。ルーブル美術館の館長が殺されることから物語が始まります。殺人の容疑をかけられた、象徴学の教授ラングトンと被害者の孫ソフィーは、館長が死の間際に巧みな方法で暗号を遺してくれたことに気づきます。そして、ラングトンとソフィー、宗教史学者ティービングが協力してさまざまな象徴や無数の暗号を解いていきます。やがて彼らが辿り着いたのは、ダ・ヴィンチの名画『最後の晩餐』に隠されたメッセージ、教会が自分の権威を守るために隠し続けてきた、本当のイエスの姿、教え、生涯でした。それは私たちが信じてきたものとは全く別のものでした。問題は、各巻の冒頭にある、著者ダン・ブラウンの言葉にあります。「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている。」 ミステリーはフィクションだが、そこに出てくる歴史的事実や聖書やイエスに関する記述は、全部事実だと主張していることです。その内容は次のようなことです。
- 聖書は、数え切れない翻訳、補足、修正のくりかえし。信じられる聖書は存在しない。
- イエスとマグダラのマリアは結婚していた。イエスは自分の後継者としてマリアを選んだ。このことが公表されなかったことは、史上最大の隠蔽だ。
- 今までキリストについて伝えられてきた話は、みな捏造されたものだ。すべてローマ皇帝コンスタンチヌスの仕業なのだ。イエスを神の子としたのも、皇帝が開いたニケヤ会議での投票の接戦の結果である。
- キリスト教会は、一人の男の教えに従った団体でしかなかった。その後、権力のために本当のイエスの教えを隠蔽した者たちが、民衆を都合よく誘導した。
- 教会が隠蔽している事実を、消されないように守り続けてきた秘密組織がある。
この主張について、歴史学者のポール・マイヤー博士ら、聖書学者、神学者など専門家たちが検証していくのがこのDVDです。これを見ると、やはりダン・ブラウンは作家であって歴史家ではないことがわかります。「本当の検証はこうやるんだよ」とばかりにブラウンの「証拠」を退けていきます。ただし、その専門家たちも「面白い小説だ」ということだけは認めています。
映画も公開され、その影響はますます強くなっています。教会に来ている人たちの中にも、「えっ?!イエス様ってそういう人?」「教会って、安心して来れる場所じゃないの?」と疑う人たちが出てきています。また、教会の外にいる潜在的な求道者たちのためにも、これを観る機会を作ってあげてはいかがでしょうか?