ビデオ 試写室◆ ビデオ評 105 天を垣間見て、地上を生き抜いた人々の物語
『黙示録―ヨハネの最期―』(2002年イタリア) -その1-

『黙示録 ―ヨハネの最期―』
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

 聖書の最後の巻「ヨハネの黙示録」は、映画では、「地獄の黙示録」「愛の黙示録」「黙示録の天使たち」など、タイトルにはよく使われますが、黙示録そのものを扱った作品はありません。多分これが初めての、聖書の黙示録を映像化した作品でしょう。今までの技術ではできなかった黙示録の映像化が、デジタル技術を併用して実現しました。

 ローマ帝国ドミティアヌス(ブルース・ペイン)は、自分を「唯一の神」と主張し、彼を神として拝まない者、そして彼以外の神を拝む者を処刑しました。そのために、特に小アジヤの教会から、多くの殉教者が出ました。黙示録はその小アジヤの教会のために書かれました。

 直接キリストを知る使徒たちがほとんど死んだ90年代。ヨハネ(リチャード・ハリス)だけが残っていました。しかし彼も、パトモス島に流刑になって、信徒たちから引き離されています。使徒を失った教会は落胆し、迫害に耐え抜く力も萎えています。ヨハネは手紙を書きます。定期的にパトモス島に物資補給に行く船の船員の信徒が、ヨハネから手紙を受け取っては教会に届けます。

 その手紙の内容は、ヨハネが幻で見た未来の世界でした。(黙示録6章)それを整理すると、(1)白い馬に乗った勝利者(復活のキリストの力)、(2)赤い馬に乗った者(戦争)、(3)黒い馬に乗って秤を持った者(貪欲)、(4)青白い馬に乗った者(飢饉と死)、(5)殉教者たちの叫び、(6)「白い衣を着た聖徒たち」「命の書」(7)7人の天使と7つのラッパ。最後のラッパが吹かれると、太陽をまとった妊婦が子どもを生む。それをサタンが襲う。子どもは天に引き上げられ、女は荒れ野に逃げ、守られる。(キリストの勝利)。ヨハネはそれを見て喜び、書き送ります。信徒たちは勇気づけられます。

 エペソ教会とパトモス島を結ぶ存在として、女性信徒のアイリーン(ヴィットリア・ベルヴェドール)が登場します。私たちは、彼女の目を通して地上を見、ヨハネの幻を通して天上を見ます。地上だけを見ていると、とても御心が行なわれているとは思えない。しかし、天を垣間見るとき、神のご計画は着々と進んでいることがわかります。そしてまた目を地上に戻すとき、そこで戦う勇気が湧いてくるのです。特にヨハネの臨終間際に見る新天新地は、この悪い時代を生きる私たちにも、大きな希望を与えてくれます。今の日本も、大変な迫害の危機を迎えています。現実から目をそらしたくなりますが、直視すべきです。その勇気を与え、勝利を確信させてくれるのが「黙示録」です。それを自分の力にするために、このDVDが与えられたのだと思います。