ブック・レビュー 『聖書が語るビジネスの法則』
林 晏久
元丸紅金属販売株式会社代表取締役
フェローシップ・ディコンリー福音教団・前住吉山手キリスト教会牧師
ビジネスと信仰の架け橋としてよい示唆が与えられる
「この本は儲けるためのノウハウが書かれた本ではない。……我々が毎日携わっているビジネスや企業の現代経営手法等のルーツを聖書に求めて書かれたものである」(一〇頁)。著者はコンサルタント会社を経営する現役のビジネスマンであり、同時に教会を建て上げ、長く牧会伝道を続けておられる牧師でもある。その体験から本書は生まれた。「現代のビジネスマンは、あまりにも熾烈な競争の世界で見かけだけの成功を追い求めて、さ迷っているのではないか」との問いかけが本書全体から伝わってくる。
本書の中心は、第二章「旧約聖書に見る現代経営モデル」である。著者が二十年間温め続けた発想に基づいており、年季の入った洞察が豊富で楽しい。評者も長らくビジネスの世界に身を置いていた者として、モーセ(組織論)やソロモン(プレハブ建築工法)など一気に読ませていただいた。これらのモデルを基点として、ビジネスの概念から企業倫理にまで及び、ビジネスマンは大いに参考になるであろう。まさにビジネスと信仰の架け橋の役割を本書は果たしている。
第五章では企業倫理について詳しく語られている。「競争が厳しくなればなるほど、手段を選ばない取引が行われる。最近の日本でも、証券取引法違反、粉飾決算、自動車の欠陥隠し、耐震強度偽装、賞味期限改竄など、利潤の飽くなき追求のためになされる企業の犯罪が、次から次へと明るみに出されている」(一九五頁)。
企業内でも、コンプライアンスが叫ばれる中で、聖書から企業倫理の基本的な問題についてメスを入れ、対応策を学べる本書の意義は高く評価される。この章では、クリスチャンが悩む信仰と仕事の両立についても、読者はよい示唆が与えられるに違いない。
本書は日々信仰とビジネスの間で格闘するクリスチャンの気分を一変させてくれる。各教会の壮年会などで用いられることを願うものである。ぜひこの一冊を蔵書に加えられ、各教会の壮年会などで用いられることを……。