私のとっておきの1冊 第2回 『望みの朝を待つときに ─共に生きる世界を
小暮修也 著


琴 めぐみ(仮名)
日本同盟基督教団・徳丸町キリスト教会会員


望みの朝を待つときに
─共に生きる世界を

小暮修也 著
A5判 80頁
定価 630円

新聞やテレビでは聞こえてこない生の声が書かれている

 本のオビに「サッカーボールをありがとう。でも、兵隊さんはいりません」という衝撃的な言葉が書かれている。この衝撃的な言葉が本を手に取るきっかけになった。

 今、世界で何が起こっているのか? 戦争、貧困、飢餓……日本ではなかなか見えてこない、新聞やテレビでは聞こえてこない生の声がこの本には書かれている。

 イラク戦争が始まる前、一般の報道から聞こえてくる「イラク」は遠い中東の世界。そして、何やら独裁者がいるらしく、また大量破壊兵器を所持しているらしい。けれど、この本にはそんな想像ではなく現実が書かれている。

 「ぼくたちの夢は本物のサッカーボールを蹴ることなんだ」

 イラクに住むごく普通の子どもたちがいるということを知った。内乱状態が続く今もイラクの子どもたちはそのささやかな願いを抱いてすごしているのだろうか……。

 また、イラクの子どもたちのほか、フィリピンの性的虐待を受けた子どもたち、児童労働や児童買春の問題についても触れられている。データが地図と数字とともに並んでいるので一目で世界を見ることができる。単なるデータではなく、そこには小さな子ども一人ひとりの苦しみがあることを忘れてはならないということを思い起こさせる。写真も数点掲載されているので、より視覚に迫ってくるものがある。悲しみを背負いつつも輝くような笑顔を見せる子どもたち。

 「かわいそうな子ども」とレッテルを貼るのではなく、また自分には関係ない「遠い国の話」としてとらえるのでもなく、私たちにどのようにかかわってくるのか、自分には何ができるかを問い続けたい。

 この本に書かれていることは世界で起きていることのほんの一部かもしれない。けれど、その一部から世界について考える、ということを訴えているように思う。「共に生きる世界」を考えてみませんか?